熊本地震から10年、「揺れの後」に亡くなった人が8割という事実を知っているか

2026年4月14日で、熊本地震の最初の震度7から10年が経った。犠牲者は熊本・大分両県で278人。この数字自体は報道で目にした人も多いと思う。
ただ、その内訳を知ると印象がだいぶ変わる。直接死――つまり建物の倒壊や土砂崩れで亡くなった人は50人。残りの約225人は「災害関連死」とされている。地震そのもので命を落としたのではなく、その後の避難生活で命を落とした。
「地震の後に死ぬ」とはどういうことか
災害関連死。ニュースではよく聞く言葉だけど、具体的に何が起きていたのかはあまり語られない。
熊本県の調査によると、原因で最も多かったのは「地震のショック・余震への恐怖による肉体的・精神的負担」で112人、全体の40%。次いで「避難所等の生活による負担」が81人で28.9%。病院や高齢者施設が被災して転院中に亡くなった人が27人、エコノミークラス症候群で亡くなった人が少なくとも33人いたとされている。
直接死: 50人 / 災害関連死: 約225人 / 合計: 278人
災害関連死が全体の約8割を占めた
疾病別では呼吸器系疾患が63人、循環器系疾患が60人。そして自ら命を絶った人が19人。この「19」という数字が、避難生活の過酷さを静かに物語っている。
避難者の7割が車中泊を経験していた
熊本地震で特徴的だったのが、車中泊の多さだった。県の調査では避難者の約7割が車中泊を経験したとされる。
理由はシンプルで、余震が怖かったから。2016年4月14日にマグニチュード6.5の前震、わずか28時間後の16日にマグニチュード7.3の本震。観測史上初めて、同じ場所で震度7が2回記録された。建物の中にいることへの恐怖は、想像に難くない。
「あの時は車の中のほうがまだ安心できた」「建物が怖くて、何日も車で寝た」といった声は、10年経った今もSNSで当時を振り返る投稿として目にすることがある
車中泊は水分摂取が減り、同じ姿勢が長時間続く。脱水、便秘、低体温症、そしてエコノミークラス症候群。血栓が肺に飛べば、命に関わる。実際にそれで亡くなった人が少なくとも33人いた。「避難」しているはずなのに、避難そのものが命を削っていた。
10年で変わったこと、変わっていないこと
では10年で何が変わったのか。
目に見える変化の一つが「トイレカー」の普及。避難所のトイレ環境の劣悪さは、水分摂取を控える→脱水→エコノミークラス症候群という連鎖の入口だった。内閣府が自治体向けに補助金制度を始め、全国のトイレカーは制度開始前の80台余りから、2026年3月時点で500台以上に増えたとの報道がある。千葉県市川市が3台導入するなど、熊本以外の自治体にも広がっている。
制度開始前: 約80台 → 2026年3月: 500台以上(約6倍)
避難所のトイレ環境改善が、災害関連死を減らす鍵とされている
一方で、根本的な課題は残ったままだとする指摘もある。避難所の居住環境そのものが、国際基準から見て十分とは言い難い。体育館の床に雑魚寝、パーテーションなしのプライバシーゼロ空間。それが嫌で車中泊を選ぶ人がいた。トイレカーは対症療法であって、「避難所に行きたくない」という根っこの問題には手が届いていないのかもしれない。
熊本城は復旧に「あと26年」かかる
復興のシンボルとして語られる熊本城。大小天守は2021年に復旧工事を終え、特別公開が行われている。ただ、城全体の復旧完了は2052年度の予定。今から26年先になる。
益城町では町内の約98%の家屋が被災した。復興まちづくりセンター「にじいろ」が2022年に建てられ、新しいカフェや複合施設もできている。阿蘇くまもと空港は2024年度に約370万人と過去最高の利用客数を記録した。数字だけ見れば、復興は確実に進んでいる。
阿蘇地域の観光客数は、地震前の約1500万人に対して昨年は約1100万人。7割強まで回復したが、完全には戻っていない。「10年」という節目は、復興が終わった区切りではなく、まだ続いている過程の途中にある。
| 項目 | 被災時 | 2026年現在 |
|---|---|---|
| 熊本城 | 石垣・櫓が大規模崩落 | 天守復旧済、全体完了は2052年予定 |
| 阿蘇の観光客 | 約1500万人(2015年) | 約1100万人(7割強に回復) |
| 阿蘇くまもと空港 | ターミナル被災 | 2024年度 約370万人で過去最高 |
| トイレカー | 全国約80台 | 500台以上(約6倍) |
深夜にこの記事を読んでいるあなたへ
「熊本地震 死亡」で検索する人が、10年経った今もいる。過去の災害を調べること自体が、次の災害への備えの第一歩だったりする。
熊本地震が突きつけた教訓は、「地震で生き延びた後が本当の勝負」ということ。揺れを耐えても、避難生活で体を壊す。プライバシーのない空間でメンタルが追い詰められる。トイレが汚くて水を飲まなくなる。そういう、じわじわとした消耗が人を殺す。
自分の家に防災リュックがあるか。水は何リットルあるか。車中泊になったときのためにエコノミークラス症候群の予防法を知っているか。そういう具体的なことを、深夜のスマホで一つだけ確認しておくのは悪くない選択だと思う。
「熊本地震のとき小学生だった。10年経って改めて調べると、知らなかったことが多すぎる」というSNS上の投稿が印象的だった
278人の犠牲。その8割が「揺れの後」に失われた命。この事実は、10年経っても、20年経っても、忘れるべきではないと思っている。
熊本地震の犠牲者の8割が「災害関連死」だったこと、知っていた?