熊本地震から10年、NHKが公開した3D熊本城に映る「まだ終わってない現実」

2016年4月16日午前1時25分。深夜にスマホを握りしめていた人間なら、あの緊急地震速報の音を覚えているかもしれない。熊本地震の本震から、今日でちょうど10年が経った。
あの夜、何が起きたのか
2016年4月14日の前震(M6.5)に続き、28時間後の16日未明にM7.3の本震が襲った。震度7を同一地域で2回記録するという、観測史上初めての事態。熊本・大分両県で計278人が犠牲になったとされている。
当時10代だった人は、今20代半ば。小学生だった子どもたちは社会人になっている。10年という時間は、記憶を「歴史」に変えるには十分な長さだった。
NHKが公開した「3D熊本城」が突きつけるもの
NHKは4月15日、地震直後から蓄積してきた大量の映像を特殊技術で3D変換し、「被災当時の熊本城」と「現在の熊本城」を比較できるコンテンツを公開した。画面を指でスワイプすると、崩れ落ちた石垣と修復された姿が切り替わる。
天守閣は復旧済みで、最上階の展望フロアから街を一望できるようになっている。見た目だけなら「もう元通り」に見える。
ただ、宇土櫓の復旧完了は2032年度の予定。熊本城全体が完全に元の姿を取り戻すのは2052年度——今から26年後だ。
| 施設 | 2026年の状況 | 完全復旧予定 |
|---|---|---|
| 天守閣 | 展示フロア全完成、展望フロア開放中 | 完了済み |
| 宇土櫓 | 解体保存完了、調査・設計中 | 2032年度 |
| 平櫓 | 石垣積み直し完了、復旧設計中 | 未定 |
| 熊本城全体 | 約6割復旧 | 2052年度 |
天守閣が直っただけで「復興した」と思っていた自分がいた。実態は全然違う。
884世帯が「見えない被災者」になっている
仮設住宅を退去した1万6727世帯のうち、既存の福祉サービスを受けておらず、支援が必要な被災者が少なくとも884世帯いるとNHKが報じている。10年経っても、孤立したまま暮らしている人がいる。
「仮設を出たら支援が切れた。引っ越し先で誰にも会わない生活が続いている」という声がネット上で見られる。災害から10年、忘れられることが最大のリスクになっている。
4月16日の追悼式では、当時小学生だった蔵原一恩さん(17歳)が「誰一人取り残さない社会、誰もが安心して暮らせる地域の実現に向けて歩み続ける」と誓いの言葉を述べたと時事通信が伝えている。あの地震を体験した子どもが、もう高校生になっている。
深夜2時にスマホを見ているあなたへ——「グラッ」と来たらどうする
熊本地震の本震は午前1時25分だった。今この記事を読んでいる時間帯と、ほぼ同じ。寝ているところを揺れに叩き起こされ、暗闇の中で何が起きたかわからない。2016年の熊本で、それが現実に起きた。
4月18日には益城町陸上競技場で防災体験イベントが開催される予定で、VR体験や煙体験、千機のドローンによる追悼ショーも行われるとのこと。北九州市でも「熊本地震10年は節目ではない」をテーマに体験型防災イベントが開かれたと報じられている。
枕元にスマホはある。充電器もある。ただ、スリッパはあるか。懐中電灯はどこにあるか、すぐ答えられるか。
「10年前の今日、あの時間に揺れた。今でも深夜に地震速報が鳴ると心臓が跳ねる」——Xでは、当時被災した20代が当時の記憶を投稿する動きが広がっている。
2016年の熊本地震では「動物園からライオンが逃げた」というデマがSNSで拡散し、大きな混乱を招いた。深夜のパニック状態でスマホに流れてくる情報を、どこまで信じるか。10年前の教訓は、今のSNS時代にこそ効いてくる。
10年は「区切り」か、それとも「まだ途中」か
熊本城の完全復旧まであと26年。見えない被災者は884世帯。追悼式で誓いの言葉を述べた高校生は、あの夜まだ7歳だった。
10年を「節目」と呼ぶのは外側の人間で、当事者にとっては地続きの日常が続いているだけかもしれない。NHKが公開した3D熊本城の「スワイプで切り替わる過去と現在」は、そのギャップを視覚的に突きつけてくる。
深夜にこの記事を読んでいるなら、一つだけ。自分の住んでいる自治体のハザードマップを、最後に確認したのはいつだったか思い出してみてほしい。
熊本地震から10年。あなたの防災準備、正直どのくらい?