月の裏側にBluetoothは届かない — アルテミス2帰還が突きつける「宇宙のリアル」

月の裏側にBluetoothは届かない — アルテミス2帰還が突きつける「宇宙のリアル」
この記事は考察・情報整理を目的としており、事実の断定ではありません。

深夜のスマホに速報が飛び込んできた。アルテミス2、帰還。4人の宇宙飛行士を乗せた宇宙船オリオンが、太平洋にパラシュートで着水したとの報道がある。2026年4月11日、日本時間の朝9時過ぎ。月の裏側を回って帰ってきた人間は、アポロ計画以来いなかった。

アポロ超えの「静かな偉業」

地球から約40万6,690km。アポロ13号が持っていた有人飛行の最遠記録を、6,614km更新したとされている。数字だけ見るとピンとこないが、東京〜ニューヨーク間を約37往復できる距離だ。

乗組員はNASAのリード・ワイズマン船長、ビクター・グローバー操縦士、クリスティーナ・コック飛行士、そしてカナダ宇宙庁のジェレミー・ハンセン飛行士の4名。10日間の飛行を経て、カリフォルニア州サンディエゴ沖に着水した。全員の健康状態は良好とのことだ。

アルテミス2ミッション概要
・打ち上げ: 2026年4月1日
・飛行期間: 10日間
・総飛行距離: 約111万km(約69万マイル)
・最遠到達: 地球から約40万6,690km(有人飛行の新記録)
・着水: 4月10日 米東部時間20時07分(日本時間4月11日 午前9時07分頃)
・着水地点: カリフォルニア州サンディエゴ沖 太平洋上

ただ、この偉業の報じられ方は妙に静かだった。アポロの時代なら世界中がテレビに釘付けになっていたはずだが、2026年のタイムラインでは「へー、帰ってきたんだ」くらいの温度感だったかもしれない。宇宙が日常に近づいているのか、それとも僕らが鈍くなっているのか。

月の裏側で「沈黙」するコンピュータ

個人的にいちばん引っかかったのが、NASAが公開した「フェイルサイレントアーキテクチャ」という設計思想だ。GIGAZINEなどが報じている。

オリオンには8つのCPUが並列で動いている。宇宙線でビットが化けて計算結果が狂ったら、そのモジュールは即座にシャットダウンする。間違った答えを出し続けるくらいなら、黙って止まれ。残りの健全なCPUが仕事を引き継ぐ。

「間違えるくらいなら黙れ、って人間社会にも欲しい機能だな」という声もある

妙に腑に落ちる。深夜にSNSで見かける無責任な断言の数々を思い出すと、「フェイルサイレント」の美しさが際立つ。誤情報を垂れ流すくらいなら停止する。2026年の地上にいちばん足りていない思想かもしれない。

そしてもうひとつ。月の裏側を飛行中、オリオンは地球との通信が完全に途絶える。月が電波を遮るからだ。GPSもない。Wi-Fiもない。当然Bluetoothなんて論外。40万km先の月の裏側では、人類が積み上げてきたワイヤレス技術がまるごと無力になる。

宇宙船にBluetoothはない

ここが面白い。僕らは日常のあらゆるものをワイヤレスにした。イヤホン、キーボード、体重計、歯ブラシまで。Bluetooth 5.0だの6.0だの、接続の安定性がどうだのと騒いでいる。

オリオンの船内ネットワークは有線だ。TTEthernetというギガビット有線接続。Bluetoothもない。Wi-Fiもない。宇宙線が飛び交う環境で無線通信のビットが化ける可能性を、NASAは許容しなかった。

地球と宇宙船をつなぐ通信は3系統。近距離用のSバンド電波、深宇宙用のDeep Space Network、そしてレーザー光通信「O2O」。最後のやつが異常で、最大260Mbpsの光通信で4K映像をリアルタイム配信したとの報道がある。有人月探査で光通信が使われたのは史上初だという。

福井工業大学の13.5mパラボラアンテナが、地球から約7万km離れたオリオンの電波を6時間20分にわたって受信し続けたことも話題になった。国内の大学では唯一の地上局だ。中日新聞によると、研究者たちは「歴史の一ページに立ち会えた」と語っている。

宇宙 vs 地上の通信技術
・宇宙船内: TTEthernet(有線)— 信頼性最優先
・宇宙船↔地球: レーザー光通信(260Mbps)— 史上初
・次世代月面スーツ: Nokia開発の4G/LTE — Bluetooth不採用
・あなたの部屋: Bluetooth 5.0のイヤホンが3秒に1回途切れる

次世代の宇宙服も同じ方向だ。アルテミス3以降で使われる予定のAxiom Space製スーツには、NokiaとAxiomが共同開発した4G/LTEシステムが搭載されるとの報道がある。月面でBluetoothではなくLTEを選ぶ。命がかかっている場所では、「ペアリングに失敗しました」は許されない。

一方、地上では宇宙服パジャマが売れている

話が急に地上に戻る。ユニクロが展開した「ちいかわ×サンリオキャラクターズ:スペースツアー」コラボ。ちいかわとハローキティが宇宙服を着てふわふわ浮いている、あのフリースセットだ。

宇宙服モチーフのもこもこパジャマを着て、Bluetoothイヤホンで動画を見ながら、スマホで「アルテミス2 帰還」のニュースを読んでいる深夜2時の自分。月の裏側で通信が途絶する恐怖と戦っていた宇宙飛行士と、フリースの中でぬくぬくしている自分。同じ「宇宙」という言葉の、振れ幅がすごい。

「ちいかわの宇宙服のほうがNASAの宇宙服より着心地いいの、人類の敗北って感じ」といった反応もネット上で見られた

でも、この距離感こそが2026年なのだと思う。宇宙がガチの冒険だった時代は終わりつつある。宇宙がファッションになり、コラボ商品になり、深夜のタイムラインに流れてくるニュースのひとつになった。それは宇宙が「特別じゃなくなった」のではなく、「生活の中に入ってきた」ということだろう。

宇宙、正直どれくらい「自分ごと」に感じる?

次は月面に降りる

アルテミス2は月を回って帰ってきただけだ。着陸はしていない。NASAの計画では、2027年中頃のアルテミス3で月着陸船のドッキング試験を行い、2028年初頭のアルテミス4で実際に月面に降り立つとされている。実現すれば、1972年のアポロ17号以来56年ぶりの有人月面着陸になる。

そのとき月面を歩く宇宙飛行士は、Nokia製の4G/LTEで地球とつながっている。Bluetoothではなく。有線でもなく。携帯電話の電波で月面の映像が届く時代が、あと2年で来るかもしれない。

深夜のスマホで、その映像をBluetoothイヤホンで聴きながら見る日が来る。もしかしたら、ユニクロの宇宙服パジャマを着ながら。

情報の正確性については各自でご確認ください。

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