SNSを眺めるだけで脳が「反芻ループ」に入る — 研究が示したパッシブスクロールの正体

深夜にSNSをぼんやりスクロールするだけで、脳は「悩みモード」に切り替わる。複数の研究がその仕組みを明らかにした。
「見るだけ」が一番キツい
SNSには大きく2種類の使い方がある。投稿したり、コメントしたり、誰かに返信したりする「能動的な使い方」と、ただフィードを眺め続ける「受動的な使い方」だ。
研究が繰り返し示しているのは、メンタルに悪影響を与えるのは後者だという事実。スクロールしているだけ、眺めているだけ、いいねを数えているだけ。その受動的な行為が、うつや不安と強く結びついている。
脳の中で何が起きているか

「反芻思考(はんすうしこう)」という言葉がある。同じ嫌な考えが頭の中をぐるぐる回り続ける状態で、うつ病の主な特徴の一つでもある。
パッシブなSNS使用がまずいのは、この反芻思考を強化するからだと複数の研究者が指摘している。他人の生活を眺めながら「自分は?」と比較する。誰かの投稿が気になって、もう一度戻ってみる。何かを探しているわけでもないのに、ページを下へ下へとめくり続ける。
脳には「デフォルトモードネットワーク(DMN)」という領域がある。何もしていない時、ぼーっとしている時に活性化するネットワークで、ここが反芻思考の舞台だ。
パッシブスクロールは、脳から見ると「何もしていない」状態に近い。つまり、DMNが活発に動き続ける。ただし目からは、他人の楽しそうな写真や気になるニュース、自分とは違う誰かの生活がどんどん流れ込んでくる。DMNはその情報を素材として、延々と比較・評価・自己批判を回し続ける。
なぜ深夜がとくにまずいのか
夜に気分が落ちやすいのは生物学的な要素もあるが、研究によれば睡眠前のSNS使用はとくに問題が大きい。
睡眠には記憶を定着させる機能がある。これはポジティブな記憶だけでなく、ネガティブな感情を伴う記憶にも同様に働く。深夜2時に見た「自分より楽しそうな誰か」の投稿が、翌朝までじんわり残る。その感覚に心当たりがある人は多いはずだ。
入眠直前に感情的な刺激を受けると、脳はその情報を睡眠中に繰り返し処理する。悪い夢の材料を、自分で供給しているようなものだ。
「やめればいい」が答えにならない理由

SNSをやめれば解決するかというと、話はそう単純ではない。SNSは現代の社会的インフラとして機能しており、やめることで孤立感が増したり、情報格差が生まれたりするリスクもある。
研究者たちが強調するのは「使い方の質」だ。受動的なスクロールを減らし、誰かに返信したり、本当に好きなコンテンツを意図的に選んだりする——能動的に関わる時間を増やすことが、メンタルへの影響を和らげると複数の研究が示している。
ただし、これらの研究の多くは相関関係を示しているにすぎない。元々メンタルが不安定な人がパッシブスクロールをしやすいのか、スクロールがメンタルを悪化させるのかという因果の方向は、まだ完全には解明されていない点には注意が必要だ。
この研究、あなたには実感がある?
参考・出典
- Passive Facebook usage undermines affective well-being: Experimental and longitudinal evidence (Verduyn, P., Lee, D. S., Park, J., et al., 2015) — Journal of Experimental Psychology: General
- Do social network sites enhance or undermine subjective well-being? A critical review (Verduyn, P., Gugushvili, N., Massar, K., et al., 2017) — Social Issues and Policy Review
- Association of Facebook Use With Compromised Well-Being: A Longitudinal Study (Shakya, H. B. & Christakis, N. A., 2017) — American Journal of Epidemiology