お風呂のリフォーム、今申し込んでも届かないかもしれない — TOTOが受注停止に踏み切った背景

TOTOがユニットバスとシステムバスの新規受注を停止した。原因は中東情勢の悪化によるナフサ不足。「お風呂を買い替えたい」と思っても、メーカーが注文を受けてくれない——そんな事態が現実になっている。
何が起きたのか
2026年4月13日、TOTOはシステムバス・ユニットバス・トイレユニットの全シリーズで新規受注を停止すると発表した。ウォシュレットにも出荷上限が設けられているとの情報がある。再開の見通しについて、TOTO側は「現時点で目途は立っていない」としている。
システムバス(全シリーズ)/ ユニットバス(全シリーズ)/ トイレユニット(全シリーズ)
再開見通し: 未定
停止対象はTOTO連結売上高7,245億円の約15%、国内事業の約23%に相当するとBusiness Insider Japanが報じている。
株価にも即座に反応が出た。TOTO株(5332)は前週終値比で8.8%下落し5,226円を記録。2024年10月以来の最大下落幅だったとBloombergが伝えている。
ナフサが足りない、という異常事態
ユニットバスの壁や天井に使うフィルムの接着剤、人工大理石浴槽のコーティング材。これらの原料にナフサ由来の有機溶剤が使われている。ナフサというのは原油から精製される石油化学の基礎原料で、プラスチック・合成繊維・塗料など「石油でできているもの」のほぼ全てに関わる物質だ。
問題の根っこは2026年2月末に起きたイラン攻撃以降のホルムズ海峡の事実上の封鎖にある。日本のナフサ輸入の約74%は中東に依存しているとされる。原油には約250日分の国家備蓄があるのに対して、ナフサには国家備蓄制度そのものが存在しない。民間在庫は約20日分という薄さだったと日経新聞が報じている。
「リフォーム契約したばかりなのに納期未定って言われた」「新築の引き渡し、どうなるんだ」といった声がネット上で相次いでいる
深夜にこの記事を読んでいるあなたが「うちには関係ない」と思っているなら、少しだけ待ってほしい。ナフサ不足の影響はお風呂だけの話じゃない。
TOTOだけの話では終わらない
業界最大手のLIXILも同日、「供給条件(価格・納期・数量等)を調整させていただく可能性がある」と発表した。J-CASTニュースによると、「自助努力の範囲を大きく超える」という表現が使われている。タカラスタンダードもナフサ関連原材料の調達不安定化を認めたとThe Japan Timesが報じた。
| メーカー | 対応状況 | 影響度 |
|---|---|---|
| TOTO | 新規受注を全面停止 | 再開時期未定 |
| LIXIL | 供給条件の調整を示唆 | 価格・納期変更の可能性 |
| タカラスタンダード | 調達不安定化を認める | 今後の発表に注意 |
| フクビ化学工業 | 断熱材の生産停止 | 3月26日に全製品供給制限 |
TOTOとLIXILで日本の浴室リフォーム市場の6〜7割を占めるとされる。この二社が同時に供給制約に入るのは前例がないという見方もある。
Washington Post(4月7日付)は「ラーメン、K-beauty、衣服がアジアで不足し始めている」と報じた。ナフサ不足は浴室設備だけでなく、食品容器・ペットボトル・洗剤・医療用手袋など、生活のあらゆる場面に波及する構造を持っている。
原油は約250日分の国家備蓄がある。しかしナフサには国家備蓄制度が存在しない。民間在庫は約20日分。高市首相は「4ヶ月分の在庫を確保済み」と表明したが、供給網の目詰まりと価格高騰は解消されていないと日経新聞が指摘している。
深夜に考える「うちのリフォームどうなる」問題
新築やリフォームの計画がある人にとって、これは他人事じゃない。すでに契約・着工済みでも、納期変更や仕様変更の可能性がある。まだ検討段階なら、工務店やハウスメーカーへの早めの確認が必要になってくる。
受注が再開されたとしても、その直後は注文が殺到して「数ヶ月待ち」が確実視されているとの見方もある。インドや東南アジアからの代替調達が進めば夏以降に供給が回復する可能性はあるが、すぐに元通りになるとは考えにくい。
「原油の備蓄はあるのにナフサの備蓄がないって、今まで誰も問題にしなかったのか」という指摘がSNS上で広がっている
Bloombergは3月の時点でナフサ不足を「炭鉱のカナリア」と表現していた。お風呂が買えないという目に見える不便は、実はもっと大きなサプライチェーン問題の入口にすぎないのかもしれない。
見えてきた構造的な脆さ
TOTOは住宅設備だけの会社ではなくなりつつあった。半導体製造装置向けのセラミック事業が急成長し、中期経営計画「TOTO WILL2030」で米州展開を進めていた最中だったと東洋経済が伝えている。国内住設事業は2025年度時点ですでに減収減益傾向にあり、そこにナフサショックが重なった格好になる。
5月以降がひとつの山場とされている。ナフサ在庫が底を突くタイミングで、住宅設備だけでなく塗料・断熱材・配管部材など建設資材全般の調達が厳しくなる見通しだ。エチレン生産拠点の半数が減産に入っているという報道もあり、影響の裾野はまだ広がる余地がある。
中東依存度74%という数字は、平時には効率のいいサプライチェーンだった。それが一夜にしてリスクに変わる。原油には備蓄があってナフサにはない、というギャップが今回の事態を生んでいるとすれば、これは政策レベルの議論にならざるを得ない。
TOTOの受注停止、あなたの生活に影響ありそう?