ネット不要で届くメッセージ — Twitter生みの親が作った「Bitchat」が問いかけること

ネット不要で届くメッセージ — Twitter生みの親が作った「Bitchat」が問いかけること
この記事は考察・情報整理を目的としており、事実の断定ではありません。

Wi-Fiもモバイル回線もなしで、テキストが届く。Bitcoinの仕組みを使った新しいチャットアプリ「Bitchat」が静かに話題になっている。

回線を捨てた男の正体

Twitterを作った人間が、インターネットを使わないメッセージアプリを出した。

ジャック・ドーシー。Twitterの共同創業者であり、決済サービスSquare(現Block)のCEOでもある人物が、2025年7月にX(旧Twitter)上で「週末に作った」と発表したのがBitchatだ。Bluetooth Low Energy(BLE)を使ったP2P通信で、Wi-Fiもモバイル回線もいらない。アカウント登録すら不要。GIGAZINEやPC Watchなど複数メディアが報じている。

世界最大級のSNSを生み出した人間が、回線そのものを迂回するアプリを作る。この矛盾が面白い。

Bitchatの基本スペック
・通信方式: Bluetooth Low Energy(BLE)メッシュネットワーク
・通信距離: メッシュ中継で300m以上
・暗号化: エンドツーエンド暗号化(DM)
・アカウント: 不要(電話番号もメールも不要)
・フォールバック: Bluetooth圏外ではNostrプロトコルで中継
・パニックモード: ロゴを3回タップで全データ消去

開発にはBlock社が手がけるオープンソースAIアシスタント「Goose」が使われたとされている。週末プロジェクトでここまで作れる時代になった、という事実も地味に衝撃的だ。

なぜ「ネット不要」が刺さるのか

Bitchatが注目を集めたのは、技術的な面白さだけじゃない。

2026年1月、ウガンダとイランでインターネットが遮断された際にBitchatのダウンロード数が急増したとの報道がある。政府がネットを止めても、Bluetoothは止められない。半径数十メートルのスマホ同士が直接つながり、メッシュネットワークで300m以上先まで届く。検閲を迂回する手段として機能した。

「災害時にもLINEが使えなくなるんだから、こういうアプリは日本でも意味あるだろ」という声もある

一方で、2026年4月には中国のApp Storeからbitchatが削除されたとGIGAZINEが報じている。中国のサイバースペース管理局の要請によるものとされ、当局にとってはそれだけ「脅威」と映ったということだろう。

日本に住んでいると「ネットが遮断される」なんて想像しにくい。だが災害時の通信途絶は現実に起きる。2024年の能登半島地震でも携帯基地局の被害で通信が不安定になった地域があった。Bluetoothメッシュという選択肢が手元にあること自体に、意味がある。

SNSの「次」はオフラインなのか

ドーシーの動きを追うと、ある流れが見えてくる。

Twitterを作り、Blueskyの構想を支援し、分散型SNSプロトコルNostrに寄付し、そしてBluetooth P2Pアプリに行き着いた。中央集権から分散へ、そしてオフラインへ。段階的に「サーバー」から離れている。

Bitchatがオンライン接続時のフォールバックにNostrを使っている点も象徴的だ。Bluetoothが届かなければNostrで中継し、Nostrも使えなければローカルに保存して次にBluetooth圏内に入ったときに送る。「つながらなくても、いつか届く」という設計思想は、リアルタイム性を追求してきたTwitterの真逆にある。

「Twitterを作った人間がTwitterの対極にいるの、なんかエモい」というネット上の声もある

ただし現時点のBitchatは「SNSの代替」にはならない。テキストメッセージの送受信が中心で、タイムラインもフォロー機能もない。あくまで「連絡手段」であって「メディア」ではない。それでも、通信の根本を問い直すプロダクトとして無視できない存在になりつつある。

Bluetooth、地味に進化している件

Bitchatの話をしていて思い出したが、Bluetoothそのものも着実に進化している。

今週発表されたJBLの小型スピーカー「JBL GO 5」は、Bluetooth 6.0を搭載し、Auracast(1つの音源を複数デバイスに同時配信)に対応。さらにUSB-C接続で48kHz/24bitのロスレス再生もできるようになったとAV Watchが報じている。手のひらサイズ・230gの筐体でIP68防水。前モデルGO 4からの正統進化だが、注目すべきはBluetooth 6.0の採用とAuracast対応という部分。

Auracastは「1対多」のブロードキャスト技術で、空港のアナウンスを個人のイヤホンで聞いたり、1台のスマホから複数スピーカーに同時配信したりできる。Bitchatの「1対1のメッシュ」と、Auracastの「1対多のブロードキャスト」。Bluetoothが通信の両方向に進化しているのが、2026年の面白いところだ。

2026年のBluetooth、ここが変わった
・BLE メッシュ → Bitchatのようなオフラインチャットが実用レベルに
・Bluetooth 6.0 + Auracast → 1対多の同時配信が民生機器に降りてきた
・USB-C ロスレス併用 → 「無線の限界」をUSB-Cで補完する設計が標準化

ネット不要のBluetooth チャットアプリ、使ってみたい?

深夜のスマホに残る問い

Twitterが生まれたのは2006年。「今何してる?」という問いを世界中に投げかけるサービスだった。20年後の2026年、その生みの親は「回線がなくても届く言葉」を作っている。

SNSはインフラがあって初めて成立する。電波が届かなければタイムラインは更新されないし、サーバーが落ちればポストは消える。Bitchatはその前提を疑った。極端に言えば「隣にいる人と話す」という、通信の原点に戻った。

深夜にスマホを眺めながら、ふと思う。自分が毎日見ているタイムラインは、回線とサーバーと広告費で成り立っている。それが全部なくなったとき、手元に残るのはBluetoothの電波だけ。その電波で隣の人に「おはよう」と送れるアプリが、もう存在している。

それが希望なのか、それとも現代のSNSへの皮肉なのかは、まだわからない。

情報の正確性については各自でご確認ください。

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