「止められないニュース消費」が心身を蝕む — 米テキサス工科大が1,100人で確かめた相関

暗いニュースを延々スクロールする習慣、ただの暇つぶしで終わらないらしい。米テキサス工科大などのチームが学術誌で示した数字を読むと、ニュース依存の輪郭がはっきりしてくる。
「問題のあるニュース消費」、米国人の約17%
『Health Communication』誌に掲載された McLaughlin らの論文によれば、米国の成人1,100人を対象にしたオンライン調査のうち、約16.5%が「重度の問題のあるニュース消費」に分類された。研究チームはこの層を、ニュースから目が離せず、私生活・仕事・睡眠にまで影響が出ているグループと定義している。
「身体的不調」というのが、ちょっと意外なところ。頭の中の話で終わらない、というのが研究の肝になっている。
1,100人へのオンライン質問が浮かび上がらせたもの
研究を率いたのはテキサス工科大の Bryan McLaughlin 准教授。米国の成人を対象に、ニュース消費の頻度・心の状態・体の不調についてオンライン質問紙で尋ねた。「ニュースを見ていないと不安になる」「ニュースを見ると怒り・恐怖・悲しみで頭がいっぱいになる」といった項目に強く同意した人ほど、健康指標が悪化する傾向が見つかったという。
注意したいのは、これがあくまで相関関係だという点。「不安だからニュースを見続ける」のか「ニュースを見続けるから不安になる」のか、現時点で因果の向きは断定できないと論文自身が認めている。
夜のスクロールが脳と体に残すもの
論文自体は「夜限定」を扱っていない。ただ、関連分野では繰り返し指摘されている事実がある。脅威を感じる情報を浴び続けると、交感神経が優位に立ち、コルチゾール(ストレスホルモン)の分泌が高まる。本来なら眠りに入っていく時間帯にそれをやれば、入眠は遅れ、深い睡眠も減ってしまう。
寝不足の脳は、翌日また次の刺激を欲しがる。負のループは構造として完成しているわけだ。
個人的な話を一つ。世界で深刻な出来事が起きるたびに X を開いてしまう自分がいる。「最新情報を知っておかなきゃ」と思いながら、同じ事件を別のアカウントで5回読んでいる。研究の言う「問題のあるニュース消費」、たぶんこれだ。
限界点と、現実的な線の引き方
気をつけたいのが、この研究が米国の成人を対象にしている点。日本のSNS文化、特に X(旧 Twitter)中心の情報環境とは前提が違う部分があるはず。質問紙による自己申告という形式の限界もある。
「16.5%」という数字も、調査時期(コロナ禍やトランプ政権下の社会的緊張が強かった時期)に影響されている可能性が残る。同様の追試が世界各地で進行中だと聞くが、確定的な結論はまだ出ていない。
それでも、「ニュースを見るのをやめられない」感覚に身に覚えがあるなら、自分の体が出しているサインを観察してみる価値はある。寝る30分前にスマホを別の部屋に置く、深夜に開きがちなアプリだけスクリーンタイム制限をかける。論文が議論で示唆している対処も、おおむねこのレベルの行動的工夫にとどまる。完璧な解はない。だが、自分の手の届く範囲に介入の余地が残されているのは、悪くない話だと思う。
あなたはドゥームスクローリング、自覚ある?
参考・出典
- Caught in a Dangerous World: Problematic News Consumption and Its Relationship to Mental and Physical Ill-Being (Bryan McLaughlin, Melissa R. Gotlieb, Devin J. Mills, 2023) — Health Communication
- Doomscrolling Scale: its association with personality traits, psychological distress, social media use, and wellbeing (Reed M. Sharpe et al., 2022) — Applied Research in Quality of Life
- Bedtime procrastination, sleep-related behaviors, and demographic factors in an online survey on a Polish sample (Joanna Hill et al., 2022) — Frontiers in Neuroscience