同じ栄養でも、超加工食品だと1日500kcal多く食べていた — NIHの泊まり込み実験が見せた『食べる速さ』

同じ栄養でも、超加工食品だと1日500kcal多く食べていた — NIHの泊まり込み実験が見せた『食べる速さ』
この記事は研究・論文の内容をわかりやすく紹介したものです。詳細は原著論文・原典をご確認ください。

砂糖も脂質も食物繊維もほぼ同じに揃えた、2種類の食事。なのに超加工食品の側だけ、人は1日およそ500kcal多く食べ、2週間で体重まで増えていた。

同じだけ出されて、なぜ片方だけ食べ過ぎたのか

2019年、米国立衛生研究所(NIH)の代謝チームが、ちょっと意地の悪い実験をした。健康な大人20人を研究施設に4週間泊まり込ませ、前半と後半で正反対の食事を出す。片方は超加工食品が中心、もう片方は野菜・肉・卵といった未加工〜最小加工の食材が中心。

肝心なのはここ。出される食事はカロリー、糖、脂質、塩分、食物繊維までほぼ同じに揃えてあった。違うのは「加工されているかどうか」だけ。条件は「好きなだけ食べていい」。さて、どうなったか。

超加工食品の食事の2週間、参加者は1日あたり平均およそ508kcal多く食べていた。体重は約0.9kg増加。未加工食の2週間では逆に約0.9kg減った。同じ人が、出される料理を入れ替えただけで。

28日間、施設に泊まり込んで一口残らず測った

研究を率いたのはNIHのケヴィン・ホール。論文は『Cell Metabolism』に載っている。参加者は外の食事を一切とれない環境で、出された皿を好きなだけ食べ、食べ残しはグラム単位で計量された。前半・後半で食事を入れ替えるクロスオーバー方式だから、「もともと大食いの人が偏った」という言い訳も効かない。

食欲ホルモンにも差が出た。満腹を伝えるPYYは未加工食のほうで高く、空腹を伝えるグレリンは未加工食のほうで低かった。体が「もう要らない」と言いやすい食事と、言いにくい食事がある — そう読める結果だった。

ここでコンビニ飯の話になる

研究チームが挙げた容疑者のひとつが、食べる速さだ。超加工食品は柔らかく、カロリーが小さな体積にぎゅっと詰まっている。噛む回数が減り、同じ時間でも口に入る量が増える。満腹の信号が脳に届く前に、もう食べ終わっている。

柔らかく、カロリー密度の高い食品ほど速く食べられ、速く食べるほど多く口に入ってしまう — 後続の分析はこの「速さ」を有力な引き金とみている。

深夜にスマホ片手につまむ菓子パン、カップ麺、グミ、エナジードリンク。あれが「ついもう一個」を呼ぶのは、意志が弱いからというより、設計上そうなっている可能性がある。下の表は、同じ実験で起きたことを並べたもの。

 未加工・最小加工の食事超加工食品の食事
料理の例蒸し野菜、肉、卵、果物、ナッツ菓子パン、加工肉、清涼飲料、スナック
1日の摂取カロリー少なめ約508kcal多い
食べる速さ遅め速め
2週間後の体重約0.9kg減約0.9kg増

「超加工食品」という言葉は、ブラジル・サンパウロ大学のカルロス・モンテイロが作ったNOVA分類から来ている。家庭の台所では再現できない、工業的な配合や添加物を含む食品 — ざっくり言えばそういうカテゴリのことだ。

この研究、自分の食生活に当てはまると思う?

ただし、この実験には穴もある

人数からして弱い。たった20人、期間も2週間ずつ。これで「超加工食品は太る」と世界中に当てはめるのは無理がある。「超加工食品」という線引き自体への批判も根強く、全粒粉パンや無糖ヨーグルトまで同じ枠に入ってしまうことがある。栄養ではなく製法で区切る粗さだ。

因果関係をここまできれいに示した研究は珍しい。超加工食品と病気を結ぶ報告の大半は、大勢を長く追う観察研究で「よく食べる人ほど心疾患や糖尿病が多い」という相関にとどまる。2024年に『BMJ』がまとめた解析でも、関連の確かさは健康項目ごとにばらついていた。

それでも、手元の袋菓子をひとつ閉じる理由としては、508という数字は具体的すぎた。

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