うるう秒が2035年に消える — 地球の自転と原子時計、半世紀のズレを整理する

うるう秒が2035年に消える — 地球の自転と原子時計、半世紀のズレを整理する

1秒を足したり引いたりして、世界中の時計はこっそり微調整されてきた。その制度が、2035年までに姿を消す。

しかも今、地球の自転は予想を裏切って速くなっている。半世紀続いた「1秒のズレ合わせ」を、ここで整理しておく。

うるう秒は、地球の「遅れ」を埋める1秒だった

なぜ秒を足す必要があったのか。原因は、性格の違う2つの時計のすれ違いにある。原子時計は誤差が数千万年に1秒という正確さ。一方、自転で1日を決める地球は、月の潮汐などで少しずつ遅くなる。

正確すぎる原子時計と、ゆっくりズレる地球。両者の差が0.9秒を超えそうになるたび、協定世界時(UTC)に1秒を割り込ませてきた。これがうるう秒で、運用開始は1972年。以来27回、すべて「足す」方向だけの調整だった。

0原子時計の時刻(TAI)と協定世界時(UTC)の差・2017年から固定

TAIと協定世界時の差は、2017年からずっと37秒で止まったまま。地球がさぼった分を、人類が手作業で埋めてきた合計、とも読める。

2022年11月、廃止が正式に決まった

この調整を「やめよう」と世界が決めたのが、2022年の秋だった。フランスで開かれた国際度量衡総会(CGPM)が、2035年までにうるう秒を事実上止める決議を採択している。

2022年・CGPM決議のポイント — 2035年までにうるう秒の挿入を停止。協定世界時と地球の自転にもとづく時刻のズレを、当面は許す。50年以上続いた「1秒単位の同期」を手放す方向へ。

理由はシンプルで、コンピューターがうるう秒を嫌うから。一定の間隔で進むはずの時刻に、突然1秒が割り込む。この「予定外の1秒」を処理し損ね、2012年には複数のWebサービスやLinuxサーバーが障害に巻き込まれた。

できごと
1972年うるう秒の運用が始まる
2016年12月31日直近の挿入(通算27回目)
2022年11月CGPMが廃止を決議
2035年この年までに事実上の終了

地球の自転が速くなり、「マイナスのうるう秒」が議論され始めた

ところが、話はもっとややこしい。地球は遅くなるどころか、最近はむしろ速く回っている。長期では自転が遅くなる傾向なのに、2020年ごろから観測史上もっとも短い「1日」が何度も更新されてきた。

2024年7月には、24時間より約1.6ミリ秒短い日が記録された。この加速が続けば、史上初の「1秒を引く」マイナスのうるう秒が、現実の選択肢として浮かび上がる。

史上初の懸念 — うるう秒は27回すべて「足す」調整だった。自転の加速が続けば、初めて「引く」必要が出てくる。だが減算は一度も実行されておらず、システム側の備えはほぼ手つかず。

足す処理は27回も実行ずみ。だが引く処理は、ただの一度もない。動く保証のないコードを抱えたまま、世界中のシステムがその日を待っている。

あなたのスマホは、どうやって正確な時刻を保っているのか

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この壮大なズレ合わせは、手元の端末とどうつながっているのか。スマホやPCは、ネット経由のNTPやGPS衛星の信号で、定期的に時刻を合わせ直している。画面の「12:00」も、元をたどれば原子時計に行き着く。

部屋の電波時計も同じ理屈だ。日本では情報通信研究機構(NICT)が福島と佐賀から標準電波(JJY)を飛ばし、各家庭の時計が毎晩それを拾って合わせている。電池持ちや精度は機種で差があるので、買うときは公式サイト参照で。


うるう秒が消えても、当面あなたの生活時間が狂うことはない。変わるのは、地球の回り方と人間の決めた時刻が、これから少しずつ離れていく一点だけ。

1972年から半世紀あまり、地球の自転に時計を合わせ続けた時代が、静かに幕を下ろそうとしている。次に世界が足並みをそろえ直すのは、ズレが体感できるほど積もった、ずっと先の話だ。

うるう秒の廃止、どう受け止める?

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