学校で習った世界の常識、半分くらい怪しい。動物・国・食卓、それぞれ一個ずつ穴を掘ってみる。深く掘ると、思っていたより景色が違う。
「知ってる」と「正確に説明できる」の差が、雑学の面白いところ。タコの心臓の数を即答できる人、自分の周りに何人いるだろうか。
3つのジャンル、それぞれ一個ずつ
タコは心臓を3つ持って生きている
正確には「鰓心臓(さいしんぞう)」が2つと、全身に血を送る「体心臓」が1つ。鰓心臓は左右のエラそれぞれに血液を送るための専用ポンプで、そこを通過した血が体心臓に戻ってくる仕組みになっている。
血液も赤くない。ヘモシアニンという銅ベースの色素で酸素を運ぶため、酸素と結合すると青っぽく見える。冷たい海でも効率よく酸素を運べる、というのが進化的な理由らしい。
タコが泳いだあと一時的に心臓が止まる、という現象も観察されている。だから普段は這って移動するほうが省エネ。
キリンの舌は黒紫色、長さは50cm近い
あの色は紫外線対策と言われている。アフリカのサバンナでアカシアの葉を一日中食べ続ける動物にとって、舌が日焼けで火傷したら致命的。メラニン色素を多く含む濃い舌は、生存戦略の一部だった。
ついでに言うとフラミンゴがピンクなのも食べ物由来。エビや藻に含まれるカロテノイド色素が羽に蓄積した結果で、動物園で餌を変えると数ヶ月で白っぽくなる個体もいる。
アイスランドでは道路工事が妖精を避けて迂回する
これは比喩ではない。アイスランド大学が過去に行った調査で、国民の約54%が「フルドゥフォーク(Huldufólk)」と呼ばれる隠れた住人の存在を完全には否定しない、と答えている。岩の中に住むとされ、特定の岩を撤去する工事計画が見直された例も実際にある。
0
%
アイスランド成人で「妖精の存在を否定しない」と回答した割合(アイスランド大学の過去調査)
「信じている」と断言する人は少数派でも、「いない、と言い切れない」と答える人がここまで多いのが特徴的。土地と祖霊観の地続きさが残っている、と研究者は分析している。
ブータンはGDPじゃなくてGNHで国を測る
Gross National Happiness — 国民総幸福量。1972年に当時の国王が提唱した指標で、心理的幸福・健康・教育・文化・環境・地域活力・時間の使い方・生活水準・統治の9分野を測定する。経済成長を否定するのではなく、それを「目的」ではなく「手段」に置き直した点が革新的だった。
「GDPは生産の総和を測るが、人生の意味は測らない」 — ブータン政府のGNH白書より要約
フィンランドも独特だ。人口約550万人に対し、サウナの数は推定300万以上。家にあるのが当たり前で、国会議事堂にも、刑務所にも、IKEA本社にもある。サウナで重要な決議をする政治家もいるらしい。
バナナは「木」じゃない
植物学的には草本(そうほん)。あの「幹」に見える部分は葉柄が重なっただけの偽茎で、本物の幹ではない。だから世界最大の「草」と呼ばれることもある。寿命も1株あたり実は1回きりで、収穫後は枯れて子株に世代交代する。
| 食材 |
一般イメージ |
植物学上の正体 |
| バナナ |
木の実 |
巨大な草の果実 |
| イチゴ |
果物(赤い実) |
偽果。本当の果実は表面のツブツブ |
| ピーナッツ |
ナッツ類 |
マメ科の豆(落花生) |
| アボカド |
野菜サラダの具 |
果実(しかも単一の巨大な種を持つ核果) |
イチゴの「赤い実」は実じゃない
表面についている小さなツブツブ、あれが本当の果実。赤いふくらみは花托(かたく)と呼ばれる花の付け根が肥大化した部分で、植物学的には「偽果(ぎか)」に分類される。我々は実だと思いながら、ずっと花の土台を食べていた。
ピーナッツも誤解の代表格。「落花生」という和名のとおりマメ科で、地中で実をつける。アーモンドやカシューはバラ科やウルシ科の核果なので、ナッツバーに並んでいる中で「本物のナッツ」と「豆」が混在している。
知ってから景色が変わる雑学、と知っても何も変わらない雑学
タコの心臓を3つだと知っても、生活は1ミリも変わらない。それでいい。雑学の価値は、世界の見え方に小さなヒビを入れるところにある。
個人的には、アイスランドの「妖精ルート迂回」が一番好きだ。合理性で塗りつぶされた21世紀の地図に、まだ別のレイヤーが残っていることが分かる。スマホの位置情報の真下を、見えない誰かが歩いているかもしれない。
3つのうち、一番「知らなかった」のはどれ?
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