信号の「青」はなぜ緑なのか — 人に話したくなる雑学を5つ選んだ

信号機の青信号は、どう見ても緑に近い。子どものころ、一度はそう思ったはずだ。このちょっとしたズレに、千年単位の事情が隠れている。
雑学は「正しさ」で選ぶ時代になった
ネットで回ってくる雑学は、出典をたどると半分くらいが怪しい。「人は脳の10%しか使っていない」あたりが代表で、誰かの言い間違いが事実の顔をして広がったものだ。
そこで今回は、裏がきちんと取れるトリビアだけを5つ選んだ。新緑がまぶしい5月、誰かと話すときの小さな手札になるはずだ。先に、よく聞くのに実は外れている雑学を並べておく。
| よく聞く雑学 | 実際のところ |
|---|---|
| 人は脳の10%しか使っていない | 俗説。脳はほぼ全域に役割がある |
| 金魚の記憶は3秒 | 数か月単位で覚えている |
| コウモリは目が見えない | ふつうに見えている種が多い |
5位 ハチミツに賞味期限の意味はない
スーパーのハチミツにも賞味期限は印字されている。あれは食品表示のルール上つけているだけで、中身が腐るからではない。
ハチミツは水分が2割を切る。濃すぎる糖分が微生物から水を奪い、弱い酸性も重なって、菌がそもそも住みつけない。だから理論上、ハチミツは腐らない。水分の少ない国産の純粋はちみつほど、その傾向は強い。
3000年以上前のエジプトの墓から出てきたハチミツが、まだ食べられたという報告も残っている。とはいえ、腐らない食品にも例外はある。
4位 コアラの指紋は、警察の鑑識をだませる
コアラの指先には指紋がある。しかも人間のものと見分けがつかないほどそっくりだ。1996年、オーストラリアのアデレード大学の研究で、顕微鏡を使っても識別が難しいと報告された。
霊長類でもないのに、なぜか人間とほぼ同じ模様。木の枝や葉を一日中つかむ生活のなかで、別ルートでたどり着いた進化だと考えられている。理屈のうえでは、コアラが現場に指紋を残したら、鑑識は少し混乱する。
3位 バナナは「木」に実っていない
バナナがなる「木」は、木ではない。幹に見える部分は葉の根もとが重なった偽の茎で、植物としての分類は多年草。バナナは世界最大級の「草」なのだ。
ついでにもうひとつ。バナナの実は、植物学では液果、つまりベリーに分類される。名前にベリーが付くイチゴのほうは、ベリーではないのに。
2位 タコの心臓は3つ、流れる血は青い
タコの体には心臓が3つある。全身に血を送る主心臓がひとつ、エラ専用の心臓がふたつ。泳ぐと主心臓の動きが止まりやすく、それがタコには負担になるとされる。だから歩くほうを好む。
血の色も人間とは違う。酸素を運ぶ色素が、鉄ではなく銅をふくむヘモシアニンだから、酸素と結びつくと青みがかる。赤い血が鉄なら、青い血は銅。
1位 信号の青は、最初から青ではなかった
1930年、東京・日比谷の交差点に、日本で初めての自動信号機がついた。当時の法令上の表記は「緑色信号」。それでも新聞も街の人も、最初から「青信号」と呼んでいた。
呼び名のほうが勝った。1947年、法令の文言が「青信号」へ書き換えられる。色は緑のまま、名前だけが現実に追いついた格好だ。
背景には日本語の事情がある。古い日本語で色をはっきり区別する言葉は「赤・青・白・黒」の4つだけ。「青」は、今でいう青と緑をまとめて指していた。青葉、青菜、青りんご、青々とした新緑——5月のいまも、緑を青と呼ぶ癖はあちこちに残っている。
面白いのはここから先だ。日本は名前を色に合わせきれなかった代わりに、信号の色を名前へ近づけにいった。国際規格で許される範囲のなかで、できるだけ青寄りの緑を選んでいる。海外の信号より、日本の「青」はほんの少しだけ青い。
まとめ
今夜の手札を、軽く並べ直しておく。
- ハチミツが腐らないのは水分の少なさと酸性のため。ただし乳児には禁物
- コアラの指紋は人間とほぼ同じ。進化の偶然
- バナナは草で、実は植物学上のベリー
- タコの心臓は3つ、血の色は青い
- 信号の青は、呼び名が法律と色のほうを動かした
知らない人に話したとき、いちばん反応がいいのはたぶん信号の話だ。理由まで言えると、ちょっと見直される。雑学をもっと仕込みたいなら、雑学・トリビアの本を一冊カバンに入れておくと、退屈な待ち時間の景色が変わる。
5つのうち、明日いちばん話したくなったのは?