大麻が最も増えている世代は65歳以上 — スタンフォードが挙げた5つのリスク

大麻の使用がいちばん速いペースで増えている世代は、学生でもパリピでもない。アメリカでは65歳以上だ。スタンフォードの研究者が、その年代に固有の5つのリスクを挙げた。
「大麻を吸う高齢者」が、いちばん伸びている
この話を最初に見たとき、俺は数字を二度見した。アメリカで大麻を使う人の割合は、20代でも30代でもなく、65歳以上でいちばん速く伸びている。
スタンフォード大学医学部の専門家が注目しているのは、その高齢者というグループ。退職して、関節の痛みや夜の寝つきの悪さと付き合う年代だ。その人たちがいま、睡眠用のグミやオイル、ベイプの形で大麻に手を伸ばしている。医療用大麻が合法の州なら、薬局みたいにきれいな店で普通に買える。
どんな研究か。アメリカ全国規模の薬物使用調査のデータを使って、65歳以上の使用率がどう動いたかを追いかけたものだ。研究チームは、この年代の伸び方が他のどの世代よりも急だと指摘している。
理由はそれほど複雑じゃない。今65歳の人は、1970年代に20歳前後だった世代。大麻がカウンターカルチャーとして身近にあった最初の世代が、そのまま年を取った。「若い頃に少しやってた」という記憶があるぶん、もう一度手を出すハードルが低い。
スタンフォードが並べた5つのリスク
専門家が言っているのは「高齢者は大麻をやめろ」という単純な話じゃない。「若い頃と同じ感覚で使うと、体の受け取り方が違う」という話だ。挙げられたリスクを表にすると、こうなる。
| リスク | 体に起きること | なぜ高齢者で重いか |
|---|---|---|
| 薬の飲み合わせ | 大麻の成分が、肝臓で薬を分解する仕組みに割り込む | 血圧・血栓・睡眠などで複数の薬を常用しがち。効きすぎ・効かなさすぎが起きる |
| 転倒・ふらつき | 立ちくらみ、反応の遅れ、足元の不安定さ | 転倒は高齢者の大けがの主因。骨折から寝たきりにつながる |
| 心臓・血管への負担 | 一時的に心拍数と血圧が上がる | 心疾患を抱える人が多く、その負担が引き金になりうる |
| 記憶・判断力の低下 | 一時的な混乱、物忘れ、見当識の乱れ | 認知症の症状と見分けがつきにくく、誤解されやすい |
| 「昔の大麻」とは別物 | THC濃度が数十年で大幅に上がった | 当時の量の感覚で使うと、想定外の強さを一気に受ける |
並べると、どれも地味に見える。ただ一つだけ、他の4つと質が違うものがある。表のいちばん下のやつだ。
本当の問題は「ウッドストックの記憶」だった
5つの中で研究者がいちばん強調しているのが、その「昔の大麻とは別物」という点だ。1970年代に吸った経験のある人は、その時の感覚を体で覚えている。ふわっとして、笑って、眠くなって、たいしたことなかった、と。だから何十年ぶりに試すとき、当時の量と当時のイメージのまま手を出す。
ここに落とし穴がある。今の大麻は、その頃の大麻じゃない。
半世紀前を基準に「これくらいなら平気」と量を決めれば、体感で何倍もの強さを一度に取り込むことになる。研究者が報告しているのは、まさにこのパターンの事故だ。強すぎる作用で、激しい吐き気、抑えられない不安、心拍の急上昇、ひどい混乱。救急外来に運ばれる人もいる。
カリフォルニア州の別の研究では、2005年から2019年にかけて、65歳以上の大麻関連の救急外来受診が1800%を超えて増えていた。その多くは「過剰摂取」というより「思ったより効きすぎた」事故に近い。グミ1個のつもりが、その1個に40年前の何回分ものTHCが詰まっていた、という話だ。
この研究、あなたはどう受け取った?
食べるタイプは、もっとややこしい。吸えば数分で効くから「足りない」と思った時点で止められる。でもグミは効き始めるまで1〜2時間。待ちきれずにもう1個いって、30分後に2個分が同時に来る。若い人でもよくやる失敗だ。それが、心臓や血管に持病を抱えやすい年代で起きると、結果の重さが変わってくる。
これ、40年後のあなたの話でもある
ここまで高齢者の話をしてきた。でも俺がこの研究を面白いと思ったのは、これが「年寄りへの注意喚起」で終わらないからだ。
5つのリスクをよく見ると、半分は「大麻そのもの」の話ですらなかった。常用する薬の数、遅くなった肝臓の分解、細っていく心臓の余力、落ちたバランス感覚——並んでいるのは、物質よりむしろ「年を取った体」のほうの特徴だ。
同じ量の、同じ物質。それでも、受け取る体が変われば結果は変わる。
これはお酒で考えるとわかりやすい。20歳の二日酔いと35歳の二日酔いが、もう完全に別物だと気づき始めている人はいると思う。あの「効き方が変わっていく」カーブは、この先もずっと続く。今のあなたが平気なものが、ずっと平気とは限らない。
もう一つ、もっと近い未来の話がある。あなたの親だ。日本では大麻は違法だから事情は違うけれど、不眠や痛みのために何かへ頼りたくなる年代、というのは世界共通。市販の睡眠改善薬でも、痛み止めでも、サプリでも、「飲み合わせ」と「昔は平気だった」の罠は同じ形で待っている。
ただ、この研究の限界もはっきりさせておきたい。今回の調査の多くは「使用率がどう動いたか」「救急受診がどれだけ増えたか」を数えたもので、大麻が直接の原因だと一対一で証明したわけじゃない。高齢者の中には、痛みや不安が和らいで生活が楽になったと感じている人もいる。研究者自身も「使うな」ではなく「医者に隠さず相談して、量を見直して」と書いている。リスクを知ったうえで選ぶことと、知らずに昔の感覚で使うことは、まったく別の話だ。
へえ、と思ったのは、結局この5つが大麻だけの話じゃなかったこと。年を取るというのは、体が薬の扱い方を少しずつ変えていく過程でもある。やっかいなのは、記憶のほうがその変化に追いつけないことだ。
参考・出典
- Trends in Cannabis Use Among Adults Aged 65 Years or Older in the United States, 2021-2023 (Benjamin H. Han, Joseph J. Palamar ほか, 2025) — JAMA Internal Medicine
- Cannabis-Related Emergency Department Visits by Older Adults in California, 2005-2019 (Benjamin H. Han ほか, 2023) — JAMA Internal Medicine
- Changes in Cannabis Potency Over the Last 2 Decades (1995-2014): Analysis of Current Data in the United States (Mahmoud A. ElSohly ほか, 2016) — Biological Psychiatry