大麻が最も増えている世代は65歳以上 — スタンフォードが挙げた5つのリスク

大麻が最も増えている世代は65歳以上 — スタンフォードが挙げた5つのリスク
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大麻の使用がいちばん速いペースで増えている世代は、学生でもパリピでもない。アメリカでは65歳以上だ。スタンフォードの研究者が、その年代に固有の5つのリスクを挙げた。

「大麻を吸う高齢者」が、いちばん伸びている

この話を最初に見たとき、俺は数字を二度見した。アメリカで大麻を使う人の割合は、20代でも30代でもなく、65歳以上でいちばん速く伸びている。

スタンフォード大学医学部の専門家が注目しているのは、その高齢者というグループ。退職して、関節の痛みや夜の寝つきの悪さと付き合う年代だ。その人たちがいま、睡眠用のグミやオイル、ベイプの形で大麻に手を伸ばしている。医療用大麻が合法の州なら、薬局みたいにきれいな店で普通に買える。

医学誌に2025年に載った調査によると、65歳以上で「直近1か月に大麻を使った」人の割合は、2021年の4.8%から2023年には7.0%へ上がった。2年で1.5倍近い。

どんな研究か。アメリカ全国規模の薬物使用調査のデータを使って、65歳以上の使用率がどう動いたかを追いかけたものだ。研究チームは、この年代の伸び方が他のどの世代よりも急だと指摘している。

理由はそれほど複雑じゃない。今65歳の人は、1970年代に20歳前後だった世代。大麻がカウンターカルチャーとして身近にあった最初の世代が、そのまま年を取った。「若い頃に少しやってた」という記憶があるぶん、もう一度手を出すハードルが低い。

スタンフォードが並べた5つのリスク

専門家が言っているのは「高齢者は大麻をやめろ」という単純な話じゃない。「若い頃と同じ感覚で使うと、体の受け取り方が違う」という話だ。挙げられたリスクを表にすると、こうなる。

リスク 体に起きること なぜ高齢者で重いか
薬の飲み合わせ大麻の成分が、肝臓で薬を分解する仕組みに割り込む血圧・血栓・睡眠などで複数の薬を常用しがち。効きすぎ・効かなさすぎが起きる
転倒・ふらつき立ちくらみ、反応の遅れ、足元の不安定さ転倒は高齢者の大けがの主因。骨折から寝たきりにつながる
心臓・血管への負担一時的に心拍数と血圧が上がる心疾患を抱える人が多く、その負担が引き金になりうる
記憶・判断力の低下一時的な混乱、物忘れ、見当識の乱れ認知症の症状と見分けがつきにくく、誤解されやすい
「昔の大麻」とは別物THC濃度が数十年で大幅に上がった当時の量の感覚で使うと、想定外の強さを一気に受ける

並べると、どれも地味に見える。ただ一つだけ、他の4つと質が違うものがある。表のいちばん下のやつだ。

本当の問題は「ウッドストックの記憶」だった

5つの中で研究者がいちばん強調しているのが、その「昔の大麻とは別物」という点だ。1970年代に吸った経験のある人は、その時の感覚を体で覚えている。ふわっとして、笑って、眠くなって、たいしたことなかった、と。だから何十年ぶりに試すとき、当時の量と当時のイメージのまま手を出す。

ここに落とし穴がある。今の大麻は、その頃の大麻じゃない。

大麻の効きの強さを決めるのはTHCという成分。1990年代にアメリカで押収された大麻の平均濃度は約4%だった。今、店に並ぶ乾燥大麻は15%を超えるものが珍しくない。オイルやワックスといった濃縮タイプになると、60〜90%に達する。

半世紀前を基準に「これくらいなら平気」と量を決めれば、体感で何倍もの強さを一度に取り込むことになる。研究者が報告しているのは、まさにこのパターンの事故だ。強すぎる作用で、激しい吐き気、抑えられない不安、心拍の急上昇、ひどい混乱。救急外来に運ばれる人もいる。

カリフォルニア州の別の研究では、2005年から2019年にかけて、65歳以上の大麻関連の救急外来受診が1800%を超えて増えていた。その多くは「過剰摂取」というより「思ったより効きすぎた」事故に近い。グミ1個のつもりが、その1個に40年前の何回分ものTHCが詰まっていた、という話だ。

この研究、あなたはどう受け取った?

食べるタイプは、もっとややこしい。吸えば数分で効くから「足りない」と思った時点で止められる。でもグミは効き始めるまで1〜2時間。待ちきれずにもう1個いって、30分後に2個分が同時に来る。若い人でもよくやる失敗だ。それが、心臓や血管に持病を抱えやすい年代で起きると、結果の重さが変わってくる。

これ、40年後のあなたの話でもある

ここまで高齢者の話をしてきた。でも俺がこの研究を面白いと思ったのは、これが「年寄りへの注意喚起」で終わらないからだ。

5つのリスクをよく見ると、半分は「大麻そのもの」の話ですらなかった。常用する薬の数、遅くなった肝臓の分解、細っていく心臓の余力、落ちたバランス感覚——並んでいるのは、物質よりむしろ「年を取った体」のほうの特徴だ。

同じ量の、同じ物質。それでも、受け取る体が変われば結果は変わる。

これはお酒で考えるとわかりやすい。20歳の二日酔いと35歳の二日酔いが、もう完全に別物だと気づき始めている人はいると思う。あの「効き方が変わっていく」カーブは、この先もずっと続く。今のあなたが平気なものが、ずっと平気とは限らない。

もう一つ、もっと近い未来の話がある。あなたの親だ。日本では大麻は違法だから事情は違うけれど、不眠や痛みのために何かへ頼りたくなる年代、というのは世界共通。市販の睡眠改善薬でも、痛み止めでも、サプリでも、「飲み合わせ」と「昔は平気だった」の罠は同じ形で待っている。

親が新しいサプリや市販薬を飲み始めたと聞いたら、一つだけ確認してみてほしい。今飲んでいる薬を全部まとめて、医者か薬剤師に見せたか。この研究のいちばん実用的な教訓は、たぶんそこにある。

ただ、この研究の限界もはっきりさせておきたい。今回の調査の多くは「使用率がどう動いたか」「救急受診がどれだけ増えたか」を数えたもので、大麻が直接の原因だと一対一で証明したわけじゃない。高齢者の中には、痛みや不安が和らいで生活が楽になったと感じている人もいる。研究者自身も「使うな」ではなく「医者に隠さず相談して、量を見直して」と書いている。リスクを知ったうえで選ぶことと、知らずに昔の感覚で使うことは、まったく別の話だ。

へえ、と思ったのは、結局この5つが大麻だけの話じゃなかったこと。年を取るというのは、体が薬の扱い方を少しずつ変えていく過程でもある。やっかいなのは、記憶のほうがその変化に追いつけないことだ。

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