ビタミンB12「基準値内」なのに脳は足りていない — UCSFの新研究が突きつけた盲点

ビタミンB12「基準値内」なのに脳は足りていない — UCSFの新研究が突きつけた盲点
この記事は研究・論文の内容をわかりやすく紹介したものです。詳細は原著論文・原典をご確認ください。

健康診断で「ビタミンB12は正常範囲です」と言われた人へ。その「正常」、脳にとってはまだ足りていない可能性がある。

「正常値」の下限、たぶん低すぎる

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の神経内科チームが2025年2月、「Annals of Neurology」誌に出した論文がある。健康診断でB12が正常範囲に収まっている高齢者231人を追いかけたところ、正常範囲の下半分にいる人たちは、認知テストの反応速度が遅く、脳MRIで白質病変(white matter hyperintensities — 脳の神経線維が密集する領域に現れる小さな白い斑点。加齢や血流障害で増える)が多く検出された。

日本やアメリカで使われているB12の下限はおおむね 148 pmol/L(約200 pg/mL)。脳の機能から見ると、この下限ぎりぎりでは足りていない可能性がある — UCSFのAri Green教授らはそう報告している。

何をどう調べたのか

対象は平均71歳の健康な高齢者で、神経疾患の既往はゼロ。血中B12濃度を測り、認知機能テスト、神経伝導検査、脳MRIを組み合わせた。「貧血を起こすレベルの欠乏症」ではなく「あくまで正常範囲の中の上下差」が脳にどう響くかを見たのが、この研究の核だ。

結果は分かりやすかった。活性型B12(ホロトランスコバラミン)の値が低めの人ほど、視覚刺激への反応が遅く、神経伝導も鈍く、白質損傷も多い。研究チームのコメントを引くと「現行の基準値は貧血を防ぐために設計されたもの。脳神経の健康を守る基準とは別物だ」。

コンビニ中心の食生活と、この研究の接点

正直、高齢者の話だけで終わるなら俺はここまで書かない。だがB12は植物性食品にはほぼ含まれず、動物性食品(肉・魚・卵・乳製品)から摂るのが原則だ。ヴィーガン・ベジタリアン寄りの食事、極端な糖質制限の長期化、胃酸を抑える薬(PPI)の常用などで吸収が落ちることも知られている。

20代後半から30代でも、コンビニ中心・カフェイン多めの食生活を半年続ければ、知らないうちに「正常範囲の下半分」に滑り込んでいる可能性はある。

食品 B12目安(可食部100gあたり)
あさり水煮約64μg
牛レバー約53μg
さんま(焼き)約16μg
卵1個(約50g)約0.5μg
納豆(発酵由来)微量

成人の推奨摂取量は厚生労働省の指標で1日2.4μg。あさりの味噌汁を週2回も飲めば、ぎりぎり推奨ラインは超える計算になる。

サプリで盛れば安心、という話でもない

同じ研究チームは別の論文で「血中B12が異常に高い高齢者では炎症マーカーが上昇する」傾向も指摘している。シリコンバレー的なサプリ過剰摂取で解決、という結論にはならない。

研究チームの主張を一行でまとめると 「現行の下限を引き上げ、活性型B12(ホロTC)の測定に基準を切り替えるべき」。ただし学会レベルで基準値が改定されるには、追試と議論が必要だと著者自身が認めている。

今日明日「健康診断のB12が180だったから危ない」と慌てる話ではない。一方で、肉も魚も乳製品もほぼ口にしない生活を半年以上続けているなら、活性型B12を測れる血液検査を一度受けてみる、くらいの距離感がちょうどいい。

俺がこの論文を読んで一番引っかかったところ

「基準値内=健康」という雑な安心感に慣れすぎていた、と気づかされた。基準値はそもそも「これを下回ると貧血が起きる」最低ライン。「脳が最高に働く値」ではない。健康診断の数字を読む目線が少し変わる論文だった。

あなたはこの研究結果、どう受け止めた?

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