同じカロリーでも夜遅く食べると太る — ハーバード研究が示した体内時計と空腹の関係

同じ食事、同じカロリーでも、4時間遅く食べるだけで空腹感は倍増し、脂肪を溜め込みやすい体になる。ハーバードの研究チームが突き止めた、夜遅い食事の代償だ。
同じ料理を、ただ4時間ずらしてみた
マサチューセッツ州ボストン。ハーバード大医学部のフランク・シェーア教授らのチームが2022年に Cell Metabolism 誌で発表した実験は、シンプルで容赦ない設計だった。
16人の過体重・肥満の被験者。同じメニュー、同じカロリー、同じ睡眠時間。違うのは食事の時刻だけ。一方のグループは朝8時、正午、午後4時に食事をとる。もう一方は4時間ずらして正午、午後4時、午後8時の3回。それを数週間後に入れ替えて、同じ人の体で両パターンを測定した。
クロスオーバー試験と呼ばれる、この方法は強力だ。被験者間の個人差を消し、純粋に「時刻」の効果だけを取り出せる。チームは血液、唾液、脂肪組織、体温、消費カロリーまで丁寧に測った。
空腹ホルモンが「2倍」になった
結果は予想を超えていた。遅く食べたときの空腹感は、早く食べたときに比べておよそ2倍。被験者が「お腹空いた」と答える確率がそれほど跳ね上がった。
血液中のグレリン(食欲を増すホルモン)に対するレプチン(満腹を伝えるホルモン)の比率は、遅い食事の日に空腹方向へ傾いた。脳が「もっと食べろ」と命令する化学信号が強くなる。脂っこいもの、甘いもの、デンプン系への欲求も増した、と論文には書いてある。
| 指標 | 早い食事 | 遅い食事(+4時間) |
|---|---|---|
| 空腹感 | 基準値 | 約2倍 |
| 日中の消費カロリー | 高い | 低下 |
| 脂肪組織の遺伝子発現 | 分解寄り | 蓄積寄り |
| 日中の体温 | 高め | わずかに低下 |
体は黙って「脂肪を貯める側」に切り替わる
面白いのはここからだ。遅い食事をした日、被験者の体は起きている時間に使うカロリーが目に見えて減っていた。同じ食事量でも、出ていくエネルギーが少ない。差し引きでカロリーが余る。
さらに皮下脂肪を採取して遺伝子発現を調べると、脂肪を分解する方向の遺伝子が下がり、脂肪を合成・蓄積する方向の遺伝子が上がっていた。体は分子レベルで「貯蓄モード」にスイッチしていた。
本人の食欲、ホルモン、消費カロリー、脂肪細胞の遺伝子。4つすべてが揃って「太る方向」を指していた。シェーア教授は論文の中で、これは肥満の臨床現場で言われてきた「夜遅く食べると太る」という経験則に、分子レベルの裏付けを与える結果だと述べている。
ただし、この研究は万能ではない
勢いに任せて「夜食やめろ」と書くのは簡単だが、研究の限界も並べておく。
被験者は16人。すべて過体重か肥満だった。痩せ型の人で同じ結果になるかは分かっていない。実験室で食事も睡眠もコントロールされた特殊な環境で、現実の不規則な生活を完全に再現したわけではない。
そして、これは「夜遅く食べた1日」の急性的な変化を捉えた研究だ。長期的に体重がどう動くかまでは、この論文だけでは結論できない。研究チーム自身、長期試験の必要性を明記している。
俺自身、夜中の2時にスマホを片手にコンビニ袋を開けることがある。完璧に避けるのは無理だ。ただ、空腹のホルモンが倍に跳ね上がるという数字を知った後だと、その袋を開ける手が少しだけ重くなる。
この研究、自分の生活変える?
参考・出典
- Late isocaloric eating increases hunger, decreases energy expenditure, and modifies metabolic pathways in adults with overweight and obesity (Vujović N, Piron MJ, Qian J, Chellappa SL, Nedeltcheva A, Barr D, Heng SW, Kerlin K, Srivastav S, Wang W, Shoji B, Garaulet M, Brady MJ, Scheer FAJL, 2022) — Cell Metabolism
- Timing of food intake predicts weight loss effectiveness (Garaulet M, Gómez-Abellán P, Alburquerque-Béjar JJ, Lee YC, Ordovás JM, Scheer FAJL, 2013) — International Journal of Obesity