アルコールが大麻の血中濃度を押し上げる — 「まだ平気」な少量同士が、運転を一番危うくする話

少量の酒と、少量の大麻グミ。どちらも「これくらいなら平気」の量でも、混ぜると血の中の大麻成分が跳ね上がる。運転シミュレーターの中で、車は片方だけのときより大きくふらついた。
片方ずつなら「平気」な量でも
海外の研究室で、似た実験が何度か繰り返されてきた。ある日はお酒だけ、別の日は大麻だけ、そしてもう一日、両方を一緒に。そのうえで運転シミュレーターのハンドルを握らせ、車線のふらつき方を測る。
浮かんできたのは、単純な足し算ではなかった。アルコールが体に入ると、血中のTHC——大麻に含まれる「酔い」の主成分——の最高濃度が、大麻だけのときより高く出る。同じ量を摂ったはずなのに、酒が一緒だと効きが底上げされていた。
酒が大麻の効きを底上げする、という妙な話
使われたのは、運転を模した没入型のシミュレーター。アイオワ大学の施設で、ドーム状のスクリーンに夜の街路や高速道路が流れ、参加者は実物のハンドルとペダルを操作する。見ているのは「車線の中で車がどれだけ左右に揺れたか」。酒だけ、大麻だけ、両方、何もなしの四通りを比べた。
面白いのは、酒と大麻で「運転の崩れ方」がそもそも違うところ。並べると見えてくる。
| 条件 | 運転で起きやすい傾向 |
|---|---|
| 酒だけ | 「いける」と思い込み、スピードを出しがち。自信が先に立つ |
| 大麻だけ | 自分が効いている自覚があり、むしろ慎重にゆっくり走ろうとする |
| 酒+大麻 | 大麻の効きが底上げされてふらつきが増え、酒の自信過剰と重なる |
大麻だけのとき人がブレーキ側に寄る、というのは複数の研究が触れてきた。効いている感覚があるぶん、無意識に補おうとする。ところが酒が入ると、その慎重さを打ち消す方向に自信が働く。慎重さだけ消えて、ふらつきが残る——研究が描くのは、おおむねそういう構図だった。
グミは、効く前に運転席へ座らせる
ここで「食べる大麻」がじわっと効いてくる。グミやチョコに練り込まれたTHCは、胃と腸を通って肝臓で姿を変えてから効きはじめる。吸い込むのと違って立ち上がりが遅く、30分から2時間。「なんだ、効かないじゃん」ともう一個つまんで車に乗ったころ、ようやくピークが来る。
日本では大麻は違法だから、縁のない話に見えるかもしれない。ただ、食用大麻が合法な国へ旅行してレンタカーを借りる人は珍しくない。タイ、カナダ、アメリカの一部の州。お土産がてらのグミと、ホテルの冷蔵庫のビール。この二つが同じ夜のテーブルに並ぶ場面は、思っているより近いところにある。
ただ、ドームの中は本物の夜道じゃない
とはいえ、シミュレーターは現実の道路そのものではない。画面の中で車線をはみ出しても、実際の事故率にそのまま翻訳できるわけじゃないし、参加者は数十人規模。ふだん大麻を使う人と使わない人では効き方も変わる。研究チーム自身、慣れた使用者ほど見かけの影響が小さく出ることに触れている。
それでも、別々のチームが別々のやり方で測って、矢印は同じ向きを指してきた。「少量×少量」は安全の保証ではない、混ぜると体の反応がかえって読みにくくなる——少なくとも、その方向に。
「少量同士でも危ない」というこのデータ、信じる?
次に海外で、グミとビールが同じテーブルに並んだとき。この話を思い出すかどうかで、そのあとの夜道の意味は少し変わる。
参考・出典
- Cannabis effects on driving lateral control with and without alcohol (Hartman RL, Brown TL, Milavetz G, Spurgin A, Pierce RS, Gorelick DA, Gaffney G, Huestis MA, 2015) — Drug and Alcohol Dependence
- Determining the magnitude and duration of acute Δ9-THC-induced driving and cognitive impairment: A systematic and meta-analytic review (McCartney D, Arkell TR, Irwin C, McGregor IS, 2021) — Neuroscience & Biobehavioral Reviews
- The effects of cannabis and alcohol on simulated driving: Influences of dose and experience (Downey LA, King R, Papafotiou K, Swann P, Ogden E, Boorman M, Stough C, 2013) — Accident Analysis & Prevention