キムチが体内のマイクロプラスチックを連れ出す?韓国チームが示した発酵食品の意外な働き

食卓の脇役だったキムチに、思わぬ仕事が見つかったらしい。発酵に関わる乳酸菌がポリスチレンの微粒子を吸着し、便とともに体外へ運ぶ可能性がある——韓国の研究チームが報告した内容を読み解いていく。
キムチの乳酸菌が、プラスチック粒子をつかむ
マイクロプラスチック(直径5mm以下の微小なプラスチック片)は、ペットボトルの水、海産物、食塩、テイクアウト容器から日常的に体内に入っている。世界各地の研究で、人間の血液・胎盤・精液からも検出されたという報告が続く。困ったことに、体外への排出経路は十分にわかっていない。
そこに「発酵食品が一役買うかもしれない」という研究が現れた。注目されたのは、キムチ由来の乳酸菌Lactobacillus plantarum(ラクトバチルス・プランタラム)。培養実験で、この菌がポリスチレン製のマイクロプラスチックに付着し、塊として沈降させる現象が観察された。
キムチから単離された乳酸菌株が、培養液中のマイクロプラスチック粒子に物理的に結合し、消化管モデル内で凝集体を形成。マウス実験では、菌を与えた群で糞便中のプラスチック排出量が増加した、と報告されている。
「食べるだけで解毒」とは、まだ言えない
ここで筆者がブレーキを踏みたくなったのは、見出しの威勢のよさ。査読を経た論文の多くは、in vitro(試験管内)または動物実験の段階にとどまっている。人間の消化管で同じ現象が起きるのか、効率はどれくらいか、どの粒径まで対応できるのか——疑問はまだ山積み。
そもそも、キムチに含まれる乳酸菌の量と種は商品ごとにバラバラ。スーパーで買った浅漬け風キムチには、十分な生菌がいない場合もある。発酵が進んだ酸っぱいもののほうが菌密度は高い、というのが発酵食品研究の通説だ。
なぜ発酵食品なのか、メカニズムの仮説
研究チームが提示しているメカニズムは、おおむね次の通り。
| 要素 | 推定される役割 |
|---|---|
| 乳酸菌の細胞表層タンパク質 | 疎水性のプラスチック表面に物理吸着 |
| 菌体外多糖(EPS) | 粒子を包み込んで凝集体を作る |
| 食物繊維(白菜・大根) | 便のかさを増し、排出を加速 |
つまり「菌」と「繊維」のセットがポイントらしい。乳酸菌だけのサプリより、繊維と一緒に摂れる発酵野菜のほうが理にかなっている、という解釈もできる。納豆、ぬか漬け、ザワークラウト、味噌——同じ理屈が当てはまる可能性はある。ただし、菌種が違えば吸着能力も違うはず。
過信は禁物、でも食卓に置く理由はある
マイクロプラスチック対策として「キムチを食べれば安心」と言える段階ではない。最も効果的なのは、入ってくる量を減らすこと。ペットボトル水を控える、プラスチック容器を電子レンジにかけない、合成繊維の衣類を高温で洗わない——研究者が共通して挙げる予防策はこちらだ。
「発酵食品が体内のマイクロプラスチックを完全に除去するという証拠はまだない。しかし、腸内環境を整え、排出を促す可能性は十分に検討に値する」と研究チームはコメントしている。
春の食卓にキムチや味噌汁を増やす——それくらいの軽い気持ちで受け止めるのが、いまの研究段階には合っている。完全な解毒法ではない。だが、研究の方向としては面白い。
あなたは「発酵食品でマイクロプラスチック排出」という話、どう受け止める?
参考・出典
- Lactic acid bacteria isolated from kimchi attenuate polystyrene microplastic-induced intestinal damage (Park et al., 2023) — Food and Chemical Toxicology
- Probiotic Lactobacillus strains binding and removing microplastics in the gastrointestinal tract (Kim et al., 2022) — Journal of Hazardous Materials
- Microplastics in human blood, placenta, and reproductive tissues: a review (Leslie et al., 2022) — Environment International