YouTubeで平成CMを年代順に見直したら、それぞれの空気感が妙にくっきり分かれてた。同じ三十年なのに、初期と後期では別の国に見える。
三つの時代に分けて、代表作を並べた。タブをクリックで切り替わる。
バブルの残り香が一番濃い時代
象徴は三共のドリンク剤『リゲイン』。「24時間戦えますか」のフレーズで1989年に放映が始まり、牛若丸三郎太を演じた時任三郎がビジネス戦士の鑑として描かれていた。
いま同じコピーをオフィスで流したら、人事部が真っ青になる。フレーズ自体がコンプライアンス案件に近い。
リゲイン「24時間戦えますか」
放送開始: 1989年
キャッチコピーは1989年新語・流行語大賞の銅賞を受賞。バブル末期の世相を象徴する一本として、いまも昭和末期〜平成初期を語る時の定番アイコンに数えられる。
同じ時期の日産シーマや高級セダンCMもひたすら煌びやかで、海辺・夜景・革張りの内装が延々と続く。映像の予算感が後の時代と桁違いに見える。
映像のテンションだけ見ると、いま流れている同じ業種のCMと地続きには到底思えない。当時の景気感がそのまま空気として映り込んでいる。
キャラクターがCMを乗っ取る時代
商品より先に「あの犬」「あのオッサン宇宙人」を思い出す。それが平成中期のCM。
2007年に始まったソフトバンクの『白戸家』シリーズは、お父さんが犬という設定だけで一気に話題化した。北大路欣也の声、上戸彩の娘役、樋口可南子の母役。15年以上続いたシリーズは平成CM史でも異例の長寿。
前年の2006年に始まった『BOSS』の宇宙人ジョーンズ(トミー・リー・ジョーンズ)もキャラ強度では負けてない。地球の住人を観察する宇宙人視点で、無糖ブラック缶コーヒーを売り続けた。
| シリーズ | 開始年 | 主演 |
| 白戸家(ソフトバンク) | 2007 | カイくん / 上戸彩 / 北大路欣也(声) |
| 宇宙人ジョーンズ(BOSS) | 2006 | トミー・リー・ジョーンズ |
この時期、商品スペックの訴求はほぼ後景に下がっていた。キャラに15秒〜30秒の物語を背負わせるのが定石になっている。
白戸家シリーズはCM編数で累計400本超とされ、長期キャラクターCMの代表例として広告賞を多数獲得した(編数の正確な数字はソフトバンク公式リリース参照)。
サウンドロゴで覚えさせる時代
平成後期に入ると、CMは「歌で覚えてもらう」方向に振れる。代表は2015年スタートのau『三太郎』シリーズ。桃太郎(松田翔太)、浦島太郎(桐谷健太)、金太郎(濱田岳)の昔話キャラを現代風にアレンジした。
桐谷健太が劇中で歌った『海の声』はCMから飛び出し、配信ランキングを駆け上がって紅白歌合戦にも出場した。CM発のJ-POPがここまでヒットしたのは平成最末期ならではの現象。
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DL超
『海の声』(2015) 配信ダウンロード規模(チャート1位獲得)
ニトリの「お、ねだん以上、ニトリ」もこの時期のサウンドロゴ代表例。歌の時間にして3秒、それだけでブランド名が頭に焼き付く設計になっている。後期CMはこの「短くて中毒性のあるフレーズ」を勝ち筋にした。
- au三太郎(2015〜): ストーリー+劇中歌のセット販売
- ニトリ(2007〜現役): 3秒サウンドロゴの完成形
- ロッテガーナ: 季節ごとに男女キャストを差し替えるロマンス路線
- JR東海『そうだ 京都、行こう。』: シリーズ自体は1993年開始だが、後期も継続して走り続けた長寿例
「商品スペックを言わない」傾向はこの時代で完成形に達した。代わりに歌・キャラ・世界観でブランドそのものを記憶させる。
三十年を通して見ると、訴求のレイヤーが「労働観 → キャラ → サウンド」と順に移ってきた。それぞれの時代が何に効いてほしかったのか、CMを見直すだけで読める。
YouTubeに公式アーカイブを残しているメーカーも増えた。30秒×数本で当時の空気が一気に戻ってくる。深夜のスマホで掘るには手頃なサイズだ。
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