トランプ氏の対イランSNS外交、深夜タイムラインが落ち着かない理由を整理する

米大統領のSNS投稿一本で、中東情勢の見出しが半日でひっくり返る。停戦の進展もちゃぶ台返しも、まず自分のSNSに書き込まれてから報道機関が追いかける、そんな順序が常態化している。
5月、何が起きていたのか
読売新聞は、トランプ氏が戦闘終結に向けた提案へのイラン側の回答を「完全に受け入れられない」と自身のSNSに投稿したと伝えている。ところがその数日前、ライブドアニュース経由の報道では「イランと合意に向け、かなりの進展があった」と本人が同じアカウントで報告していた、というから話がややこしい。
沖縄タイムスはホルムズ海峡の段階的開放案にまで踏み込んだ報道を出しており、進展と決裂が同じ週のなかで往復している。深夜のスマホで通知欄を見ているこちら側からすると、寝る前と起きた後で世界線が違うように見える。
・5月初旬: 本人SNSで「進展あり」投稿(ライブドアニュース報道)
・5月中旬: イラン側回答を「受け入れられない」と投稿(読売新聞報道)
・並行して: ホルムズ海峡段階的開放案が浮上(沖縄タイムス報道)
※いずれも報道ベースの整理であり、確定情報ではない
なぜ「SNS外交」と呼ばれるのか
日刊ゲンダイは、トランプ氏が交渉経過や方針転換を自身のSNSで逐一発信し続けている状況を「停戦協議を壊す最大要因では」と踏み込んで論じている。論調の是非はさておき、外交当局よりも先に大統領のタイムラインに新情報が出るという現象は、確かに従来の外交慣行とは違う。
ABEMAが伝えたところによれば、イラン側が「機雷イルカ」を検討中とする米紙報道に対し、駐日イラン大使館がSNSで全面否定するという一幕もあった。文化放送のリスナー向け呼びかけの件と合わせて見ると、イラン側もまたSNSをカウンター発信のチャンネルとして本格運用している。
外交チャンネルの主戦場が、紙のコミュニケから140字(あるいはそれ以上)の投稿欄に移った、と表現しても言い過ぎではないかもしれない。
SNS上では何が起きているか
現代ビジネスは、ハメネイ師死去で「祝賀」が起きているとされた映像の出元を辿り、出所不明のまま拡散していくSNS社会の構造を分析している。情報の真偽が確定する前に、感情的なリアクションだけが先回りして共有されていく。停戦か破談かを巡るタイムラインも、似た現象が繰り返されている。
「大統領のSNSをアラート設定してる自分が原油先物トレーダーみたいで嫌になる」「停戦のニュースで寝て、起きたら破談になってた」という声もネット上では出ている。
日経はトランプ政権のパロディー動画が波紋を呼び、本人が対イラン攻撃を「小さな旅」と形容したことを報じた。外交メッセージと内輪ノリが地続きになっていて、どこからが本気の意思表明でどこからがSNS用のリップサービスか、見ている側が判断を迫られる。深夜2時にこれを真顔で解読しているこちら側のリテラシーも、知らない間に鍛えられている気がする。
日本の私たちに何が関係するのか
原油の輸送ルートとしてホルムズ海峡が日本のエネルギー輸入に直結することは経済紙でも繰り返し指摘されてきた。ガソリン価格、電気料金、ひいては日々の物価。中東情勢の浮き沈みは、深夜のコンビニで缶ビールを買うときの一円単位で日本に跳ね返ってくる、と考えても大袈裟ではない。
もう一つ、メディア視点で見落としたくないのが、報道機関とSNSの主従が逆転しつつある点。新聞・テレビが「大統領のSNS投稿によると」と書くこと自体は数年前から続いているが、その含意は重い。一次ソースが個人アカウントなので、本人が消せば消える、本人の気分で書き換わる。
| 従来の外交発表 | 現在のSNS外交 |
|---|---|
| 報道官の会見・声明文 | 大統領本人の投稿 |
| 事前に省庁内で調整 | 本人の判断で即時発信 |
| 記録として残る | 削除・修正が可能 |
結局、私たちはどう付き合えばいいのか
速報を追いかけるのが楽しい一方で、半日後にひっくり返るニュースに体力を持っていかれるのも事実。寝る前に決着していない話題は、朝に確認するくらいの距離感が、SNS外交時代のメンタルケアとしては妥当な気がしている。
日刊ゲンダイの「最大要因」という指摘が当たっているかは時間が決めるとして、少なくとも、外交プロセスの透明度が上がったのか、それともノイズが増えただけなのか、この区別は今後の見方を分けそうだ。
大統領SNSによる外交、あなたはどう感じる?