ローマ宇宙望遠鏡が映すかもしれない10万個の惑星 — 銀河の中心を「時間」で見張る計画

ローマ宇宙望遠鏡が映すかもしれない10万個の惑星 — 銀河の中心を「時間」で見張る計画
この記事は研究・論文の内容をわかりやすく紹介したものです。詳細は原著論文・原典をご確認ください。

夜空のほんの一角。そこに10万個もの惑星が隠れているかもしれない、とNASAの新しい宇宙望遠鏡をめぐるシミュレーションが弾き出した。打ち上げはまだ先。なのに、見つかる前から数だけが先に語られている。

10万個、という途方もない数字

話の主役は「ナンシー・グレース・ローマ宇宙望遠鏡」。ハッブルとほぼ同じ口径の鏡を持ちながら、一度に見渡せる空の広さがハッブルの100倍という、横にやたら広い目を持った望遠鏡だ。2027年5月までの打ち上げを目指して、いま組み立てが進んでいる。

そのローマが計画しているサーベイ(広い空を系統的に観測する作業)の一つを、研究チームがピクセル単位でまるごと模擬計算した。出てきた予測がこれ。

銀河の中心方向を見張るだけで、ローマは 0 個ほどの「恒星の前を横切る惑星」を検出できる ── 2023年に米天文学誌に載ったシミュレーション研究の見積もり。

いま人類が30年かけて確認してきた系外惑星(太陽以外の星を回る惑星)は、ぜんぶ足しても6000個に届くかどうか。それを一つの観測計画が桁違いに塗り替える、という話になっている。研究チームは論文の中で、あくまで「検出可能と予測される数」であって確定ではない、と何度も念を押している。

「影が横切る一瞬」を、銀河の中心で待ち伏せる

どうやって惑星を見つけるのか。今回の主な手口はトランジット法と呼ばれるもの。星の手前を惑星が横切るとき、星の光がほんのわずかに暗くなる。その「まばたき」を捉えて、見えない惑星の存在を逆算する。

明るさの落ち込みは、地球サイズの惑星なら1万分の1ほど。肉眼どころか、ちょっとやそっとの望遠鏡では埋もれてしまう。ローマが狙うのは、星がぎっしり密集した天の川の中心方向。視野いっぱいに何千万もの星を詰め込んで、その一つひとつのまばたきを何度も見張る。母数が桁違いだから、確率の低い「横切り」も数で稼げる、という発想だ。

ローマにはもう一つ得意技がある。重力マイクロレンズ。手前の星の重力が、奥にある星の光をレンズのように曲げて一瞬だけ強める現象で、星の周りに惑星があると光の増え方に小さなクセが出る。トランジットが「光が減る」のを見るのに対し、こちらは「光が増える」のを見る。2019年の別の試算では、この方法だけでも1400個ほどの惑星が見つかると見積もられていた。

どちらの方法も、惑星そのものを「撮る」わけではない。惑星が星に落とす影や、星の光を曲げるゆがみ ── つまり惑星がいた痕跡を読み取っている。直接の姿は、ほとんどの場合まだ見えていない。

あなたのスマホにも、同じ仕掛けが少しだけ入っている

「光がほんの少し暗くなった瞬間を、無数の点の中から拾い上げる」── これ、夜にスマホで星空アプリを開いたり、暗い部屋で自撮りしたりするときセンサーがやっていることと、原理の根っこは地続きだ。

スマホのカメラは、わずかな光の差を電気信号にして拾う。ローマの観測装置も、桁外れに精密になっただけで「光の量の差を測る」装置であることは変わらない。違うのは、こちらは数億キロ先の星の、1万分の1の明るさのゆらぎを、何年もかけて根気よく見張り続けるという点。

もう一つ、この計画には地味だが効いてくる狙いがある。今まで見つかってきた系外惑星は、地球から比較的近い領域に偏っていた。ローマが見るのは天の川の中心 ── 銀河の「都心」だ。郊外(太陽系のあたり)だけ調べて家賃を語っていた状態から、都心の物件もまとめて見にいく。惑星が銀河のどこに、どんな割合で散らばっているのか。その地図を初めて広域で描けるかもしれない、と研究者は語っている。

10万個という予測、あなたはどう受け取った?

ただし、これは「見つかるはず」の数字

ここで一回ブレーキ。10万という数は、観測で「実際に拾えた」結果ではない。コンピューター上で望遠鏡の動きと銀河の星々を再現して、「この計画なら理屈の上でこれくらい検出できる」と推定したシミュレーションの産物だ。

現実は、たいてい予測より渋い。星が密集した領域は光が重なり合って読み取りが難しく、見かけだけ惑星っぽく見える誤検出も混じる。研究チーム自身、論文の中で見積もりには幅があり、装置の最終性能や観測時間の配分しだいで数は上下すると書いている。打ち上げが2027年予定である以上、答え合わせは少なくとも数年先。

項目中身
望遠鏡ナンシー・グレース・ローマ宇宙望遠鏡
打ち上げ目標2027年5月まで(公式サイト参照)
主な探し方トランジット(光の減り)+重力マイクロレンズ(光の増え)
10万個の正体実測ではなく、ピクセル単位の模擬計算による予測値

それでも、と思う。これまで惑星探しは「太陽系のご近所」を地道に当たる作業だった。ローマはその視線を、初めて銀河の中心へまっすぐ向ける。10万という数字が半分になろうが、見ている方向そのものが変わる。深夜にこの画面を見ているあなたの真上、天の川のいちばん濃いあたりに、名前のない惑星が10万個 ── そう考えると、いつもの夜空が少しだけ重く見えてくる。

Amazonで関連商品を見る

このブログの人気の投稿

モバイルバッテリー、結局どれ買えばよかったのか——全部持ち歩いて気づいた2026年の正解

在宅デスク周り、全部試して残った5つだけ――2026年版ガジェットランキング

ビタミンB12「正常値」でも脳は削れていた — UCSF研究が突きつけた基準値の盲点