2026年もプレイリストに残るボカロ5曲 — 「KING」から「きゅうくらりん」まで、いま聴き直す序列

5位から並べる。1位は2021年の曲だ。投稿から年数が経っても、2026年のいま誰かの再生リストにまだ刺さっている5曲を、刺さり方の深さで順に置いていく。
5位 KING — 0.3秒で掴むイントロの暴力

シンセが鳴った瞬間、もう逃げられない。Kanariaが2020年に投稿したこの曲は、ボカロを通らずに育った世代まで巻き込んだ。
GUMIの声を限界まで歪ませた跳ねるメロディ。歌ってみた、踊ってみた、切り抜き——拡散のフォーマットを最初から全部備えていた曲だった。
Kanariaはこの後「アイデンティティ」「百鬼夜行」と続けて投稿。三作とも同じ「掴みの速さ」で貫かれていて、まとめて聴くと作家性がはっきりわかる。最新の投稿状況はKanariaの公式チャンネルを参照。
4位 ボッカデラベリタ、嘘と真実の見世物小屋

歌詞の意味を調べ始めると、戻ってこられなくなる。
柊キライが2021年に投稿した一曲。v flowerの低く詰めた声が、見世物小屋の口上のように転がっていく。タイトルはイタリア語で「真実の口」を指す。ローマの観光名所、あの石の彫刻だ。
嘘をつけば手を噛まれる。だとしたら、この曲で歌われているのは誰の嘘なのか。コメント欄が長年その問いで埋まり続けている。
サーカスのモチーフ、裏切り、見世物にされる側の視点——複数の読みが成立するように作られている。正解を一つに絞らない構造そのものがこの曲の強度になっている。MVは柊キライ ボッカデラベリタで確認できる。
3位 ラグトレイン — 過ぎた時間を引き伸ばす音

終電を逃した駅のホームで流したくなる音がある。稲葉曇が2020年に投稿した「ラグトレイン」が、まさにそれ。
歌愛ユキの素朴で少し舌足らずな声と、揺れるギター。派手なサビで殴ってこない代わりに、聴き終わったあとの余韻がやけに長く残る。TikTok経由で海外のリスナーにまで届いた。
稲葉曇は「ロストアンブレラ」「ハルノ寂寞」など、同じ歌愛ユキを起用した曲で世界観を地続きにしている。続けて聴くと一つの風景が見えてくる。稲葉曇 ラグトレイン
2位 フォニイが変えた「声」の話

この曲を境に、ボカロの「声」の常識が静かにずれた。
ツミキが2021年に投稿。歌うのは初音ミクでもGUMIでもなく、可不(KAFU)だ。歌手・花譜の声をもとにしたCeVIO AIの音声ライブラリで、人間の歌声に限りなく近い質感を持つ。
その生々しさが、「この世全部嘘なんだぜ」という歌詞の虚無感とぴたりと噛み合った。合成音声が人間の感情の手前まで踏み込んだ瞬間として、筆者はこの曲を記憶している。
バーチャルシンガー・花譜の歌声を学習させたCeVIO AIの音声合成ソフト。生身のシンガーが先にいて、その声からボカロ的な存在が生まれた逆転の構図が面白い。曲はツミキ フォニイで。
1位 きゅうくらりん、笑顔の裏で軋む音

笑っている顔がいちばん怖い、という曲。
Iyowaが2021年に投稿。初音ミクのかわいい声と、軽やかに跳ねるサウンド。その裏で、歌詞だけが少しずつ壊れていく。
明るい音と暗い言葉の落差。聴くたびに気づく違和感が癖になって、何度も再生ボタンを押し直すことになる。1位にした理由は単純で、5曲の中でいちばんリピート回数が多かったから。
かわいい曲だと思って流して、歌詞を目で追った瞬間に表情が固まる。あの体験は一度きりしか味わえない。
「キュートなカノジョ」「ハロー、ホムンクルス」など、ポップな見た目に毒を仕込む手つきが一貫している。きゅうくらりんが刺さったなら次はこのあたりへ。Iyowa きゅうくらりん
5曲を一枚に並べると
| 順位 | 曲名 | 制作者 | ボーカル | 投稿年 |
|---|---|---|---|---|
| 5 | KING | Kanaria | GUMI | 2020 |
| 4 | ボッカデラベリタ | 柊キライ | v flower | 2021 |
| 3 | ラグトレイン | 稲葉曇 | 歌愛ユキ | 2020 |
| 2 | フォニイ | ツミキ | 可不 | 2021 |
| 1 | きゅうくらりん | Iyowa | 初音ミク | 2021 |
5曲とも投稿から4〜6年が経つ。それでも2026年の再生リストに居座り続けるのは、どれも「最初の数秒」か「歌詞の毒」のどちらかを持っているから。並べてみて気づいたのは、掴みで勝つ曲と、離さないことで勝つ曲がきれいに分かれていたこと。
順位はあくまで筆者のリピート回数による。あなたの1位は、たぶんこの並びとは違う。
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