チンパンジーにも「親友の輪」があった — ヒトの友達5人説、その起源は森にあるかもしれない

あなたが本気で頼れる相手は、たぶん5人くらい。そのことを、森のチンパンジーも知っているらしい。霊長類の友達づきあいを調べた研究が、ヒトとよく似た「友情の層」を見つけた。
近い順に、輪が重なっている
研究チームが注目したのは、チンパンジーとボノボが「誰と、どれくらいの濃さで」つきあっているかという構造だった。毛づくろい、一緒に過ごす時間、近くにいる頻度。そうした行動を積み上げると、つきあいの濃さに段階があることが見えてきたという。
べったりの相手はごく少数。その外側に、まあまあ仲のいい層。さらに外に、顔は知っているけど距離のある層。同心円が何重にも重なるような形だった。
この「層になった友達づきあい」、どこかで聞いた話に似ていないだろうか。
「ダンバー数」を覚えているだろうか
人類学者のロビン・ダンバーが提唱した有名な仮説がある。ヒトが安定して関係を保てる相手は、だいたい150人。これがダンバー数と呼ばれるものだ。脳、とくに思考や社会性をつかさどる新皮質の大きさと、群れのサイズに相関がある——その延長で導かれた数字だった。
面白いのは、150という外枠だけでなく、その内側にも層があるという点。本当に親密な5人(困ったとき真っ先に連絡する相手)、その外の15人、50人、150人。内側ほど人数は少なく、つきあいは濃い。スマホの連絡先を思い浮かべると、妙に腑に落ちる構造ではある。
今回の研究がやったのは、その「内側の層構造」が、ヒト以外の大型類人猿にもあるかを確かめることだった。結果として、チンパンジーにもボノボにも、濃淡のある重なった輪が観察された、と研究チームは述べている。
あなたが「本気で頼れる相手」、何人いる?
SNSのフォロワー数は、たぶん嘘をついている
ここからが、深夜のあなたに刺さる話。
もしヒトもチンパンジーも同じ「層の構造」で人とつきあっているなら、フォロワー1万人とか、友達申請が来た200人とかは、脳の処理能力からするとかなり無理をしている数字だということになる。外側の薄い層をいくら広げても、内側の濃い5人は5人のまま。器の中身が増えるわけではない。
夜中にタイムラインをスクロールして、知り合いの近況を大量に浴びても、なぜか満たされない感覚。あれは怠けでも性格でもなく、内側の輪に届いていないからかもしれない——と読むこともできる。研究はそこまで言っていないが、構造の話としてはつながる。
| 層 | ヒトでの目安人数 | つきあいの濃さ |
|---|---|---|
| 最も近い輪 | 約5人 | 深刻なときに頼れる |
| 親しい輪 | 約15人 | よく遊ぶ・話す |
| 広い友人 | 約50人 | たまに会う |
| 顔の見える限界 | 約150人 | 名前と関係がわかる |
ただし、鵜呑みにする前に
気をつけたいのは、この手の研究が観察データの解釈に頼っている点。野生に近い環境であっても、つきあいの「濃さ」をどう数値化するかで結論は揺れる。毛づくろいの時間を友情の指標にしていいのか、という議論も以前からある。
ダンバー数そのものにも反論がついて回ってきた。150という数字は集団によってかなりばらつくし、現代のヒトの脳に一律で当てはめるのは乱暴だ、とする研究者もいる。今回の発見は「ヒトの友情の起源が類人猿と地続きかもしれない」という方向を示すものであって、あなたの友達が5人だと確定させるものではない。
それでも、森の奥でチンパンジーが特定の相手にだけ長く毛づくろいをする姿と、深夜に特定の1人にだけ長文を送ってしまう自分が、同じ仕組みの上にいるかもしれない——そう思うと、スクロールの手が少し止まる。
友達の数より、毛づくろいに何分かけたか。指標を変えると、見える人間関係が変わる。
今夜、内側の5人に入っているのは誰だろう。
参考・出典
- Discrete hierarchical organization of social group sizes (R. I. M. Dunbar, et al., 2005) — Proceedings of the Royal Society B
- Neocortex size as a constraint on group size in primates (R. I. M. Dunbar, 1992) — Journal of Human Evolution
- Layered social network structure in chimpanzees and bonobos (research team (great ape social structure study), 2026) — iScience / comparative primatology