疲れが抜けない体の中で、赤血球が少し大きくなっている — ビタミンB12と葉酸をめぐる話

疲れが抜けない体の中で、赤血球が少し大きくなっている — ビタミンB12と葉酸をめぐる話
この記事は研究・論文の内容をわかりやすく紹介したものです。詳細は原著論文・原典をご確認ください。

いくら寝ても疲れが取れない。その背後で、血液の中の赤血球が本来より大きく膨らんでいることがある。ビタミンB12と葉酸が足りない体で起きる、地味だが見過ごせない変化の話。

「疲れてる」が、血の中に形として残る

ビタミンB12(コバラミン。神経や赤血球を作るのに必要なビタミン)と葉酸(ビタミンB9。同じく細胞分裂に欠かせない)が足りなくなると、体は赤血球をうまく作れなくなる。

面白いのは、その失敗の仕方だ。DNAの材料が足りないせいで細胞分裂が途中で止まり、中身だけ育った赤血球が「大きいまま」血の中に流れ出す。これを巨赤芽球性貧血と呼ぶ。健康診断の血液検査で「MCV(赤血球の平均的な大きさ)が高い」と書かれていたら、その入り口に立っている可能性がある。

酸素を運ぶ赤血球が減れば、体の隅々まで酸素が届きにくくなる。「疲れやすい」「階段で息切れする」「集中が続かない」——B12と葉酸の欠乏でまず出るのが、この鈍い疲労感だとされる。

厄介なのは、B12欠乏が貧血より先に神経をやられることがある点だ。手足のしびれ、物覚えの悪さ、いわゆる「ブレインフォグ」。血液検査がまだ正常な段階でも、神経の側で静かに進むことがあると複数の総説が指摘している。

なぜ若い人にも起こるのか

B12は、ほぼ動物性食品にしか入っていない。肉、魚、卵、乳製品。植物にはほとんど存在しない。だから完全な菜食を続けている人は、意識して補わないと数年単位でじわじわ枯れていく。

食生活だけの話でもない。B12は胃で出る「内因子」というタンパク質と結びついて初めて腸から吸収される。胸やけで飲む胃酸を抑える薬、糖尿病でよく使われるメトホルミン——こうした薬が長く続くと吸収が落ちることが知られている。お酒の飲みすぎも葉酸を消耗させる。

リスクが重なりやすい人
・肉や魚をほとんど食べない(ヴィーガン・極端な偏食)
・胃薬(PPI)を長期で飲んでいる
・お酒の量が多い
・無理なダイエットを続けている

深夜にコンビニ飯で済ませ、朝は抜き、という生活が何ヶ月も続いているなら、葉酸とB12は地味に削られている。緑の葉物野菜と豆類に多い葉酸は、外食中心だと真っ先に不足する栄養素のひとつだ。

慢性疲労との「あやしい」関係

ここからは、まだ決着のついていない領域になる。原因不明の強い疲労が半年以上続く「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」の患者に、B12と葉酸を補うと症状が改善した、という報告がいくつかある。

スウェーデンのRegландらが2015年にPLOS ONEで報告した観察研究では、ME/CFSや線維筋痛症の患者にビタミンB12の注射と葉酸を継続したところ、よく反応した群とそうでない群に分かれたという。研究チームは「全員に効く特効薬ではなく、一部の患者で意味を持つ可能性がある」という慎重な書き方をしている。

あなたの「なんか疲れてる」、栄養が関係してると思う?

でも、サプリに飛びつく前に

慢性疲労の理由は、睡眠負債、甲状腺、うつ、鉄不足、そして本当に原因のわからないものまで幅広い。B12と葉酸の欠乏は、その中の「見つけやすくて直しやすい」ひとつにすぎない。逆に言えば、ここが原因なら血液検査で当たりがつく。

注意してほしいのが、葉酸の単独大量摂取だ。葉酸をたっぷり摂ると貧血だけは隠れて改善する一方、裏で進むB12欠乏の神経障害を見えなくしてしまう——この「マスキング」は古くから指摘されている問題で、自己判断のサプリ盛りには落とし穴がある。

疲れがずっと取れないなら、まずは血液検査でB12・葉酸・MCVあたりを見てもらうのが順当だろう。数字が出れば、気のせいかどうかがはっきりする。赤血球の大きさという、自分では絶対に気づけない場所に、答えが書いてあることもある。

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