この6問でわかる、あなたの脳の「マルチタスク幻想度」

Q1. 財布の中身は今、どんな状態?

スタンフォードの研究が発表されたのは2009年。それからスマホは普及し、通知の数は増え、ながら作業が当たり前になった。あの研究結果が「今」に当てはまる精度は、当時より上がっているはずだ。
Strayer & Watson(2010)の試算では、真にマルチタスクを得意とする「スーパータスカー」は全人口の2.5%以下だった。自分がそこに入ると思っていた人間の大半は、入っていなかった。

Q1. 財布の中身は今、どんな状態?

Q2. 作業中にスマホの通知が鳴ったら?
Q3. 動画や映画を観るとき、スマホも触ることは?
Q4. 昨夜、布団に入ったとき頭の中にあったのは?
Q5. 一つの作業から別の作業に切り替えるとき?
Q6. 休日、やることはどう決まる?
診断結果
あなたは認知切り替えコスト(task-switching cost)を、意識せずに最小化している。脳の実行機能の高さと相関する指標だ。
例えば、こんな場面で心当たりがないだろうか。会話中にスマホを触らない。映画は映画だけで観る。やると決めたことは終わらせてから次に移る。——これは几帳面さではなく、脳が「集中状態を維持したい」と判断している結果だ。このタイプの人が周りにいると、「この人、なんでそんなに落ち着いてるんだろう」と思う場面があるはず。
これには理由がある。Miyake et al.(2000)の実行機能研究では、注意の切り替えコストを小さくできる人ほど、複雑なタスクの成績が高かった。マルチタスクが当たり前の環境の中で、一点に深く潜れる能力は逆に希少になりつつある。Deep Workを提唱したカル・ニューポートが「認知的深度の高い人」と表現したのはこのタイプだ。
強みは、深く潜る能力と作業の質。気をつけることは、「なんでそんなに切り替えが遅いの」という外からのプレッシャーに引きずられないこと。あなたの処理は遅いのではなく、違う。
あなたはマルチタスクも、シングルタスクも、状況に応じてこなせる。それが「適応力」に見える。ただ、この「できる」という感覚に落とし穴がある。
例えば、こんな場面で心当たりがないだろうか。仕事終わりに妙に疲れているのに、何をしたか思い出せない夜がある。通知を「一瞬だけ確認した」つもりが、気づくと5分経っている。作業を再開しようとしたとき、どこまでやったか確認が必要になる。

これには理由がある。ソフィー・ルロイ(2009)が命名した「注意残留(attention residue)」という概念だ。タスクを切り替えた後も、前のタスクへの思考は頭に残り続け、新しい作業への集中を静かに阻害する。「切り替えが速い」ことは、この残留を積み重ねることと同義だ。効率が落ちているのに、気づきにくい。自分ではなく、これが構造的な問題なのだとわかると、少し楽になるはずだ。
強みは、環境への適応力。気をつけることは、「疲れていない」と「効率が下がっていない」を混同しないこと。週に一度、完全にシングルタスクで過ごす半日を作ると、本来の処理速度が戻る感覚がある。
あなたは複数のことを同時にこなすのが「普通」になっている。そしておそらく、自分がマルチタスクを得意だと思っている。それが、問題の核心だ。
例えば、こんな場面で心当たりがないだろうか。動画を観ながらスマホを触っていて、気づいたら内容を覚えていない。布団に入ると頭の中が騒がしい。作業を終えた達成感はあるのに、何か終わった感じがしない夜がある。このタイプの人、周りに一人はいるはずだ。「いつも忙しそうにしているのに、なぜか結果が出ない人」。もしかしたら、それがあなたかもしれない。
これには理由がある。Ophir、Nass & Wagnerのスタンフォード研究(2009)では、日常的にマルチタスクをする人ほど、注意の持続でも、不要情報の遮断でも、タスク切り替え速度でも——すべての指標で低い成績を示した。マルチタスクで鍛えられるのではなく、マルチタスクによって消耗していく。「得意になった」と感じているのは、「気にならなくなった」だけかもしれない。
強みは、エネルギーの量と行動力。気をつけることは、「動いていること」と「進んでいること」を混同しないこと。一日に一つだけ、完全にシングルタスクで30分取り組む時間を試してみて。
あなたの脳は常に周囲をスキャンし続けている。財布の中身は把握していないが、場の空気の変化は誰より先に感じる。動画を観ながら別のことも考えている。布団の中では思考が止まらない。——これは集中力の欠如ではなく、覚醒水準が構造的に高い状態だ。
例えば、こんな場面で心当たりがないだろうか。静かな環境が逆に落ち着かない。カフェの雑音の中のほうが集中できる。何かをしながら別の何かを考えているのが、自分の「ベースライン」だ。やることリストを作っても、優先順位より「今気になること」で動いてしまう。——自分がおかしいと思っていたなら、そうではない。
これには理由がある。神経科学ではデフォルトモードネットワーク(DMN)の過活性と関連づけることがある。思考が多方向に広がりやすく、創造性と結びつく一方で、「一点に集中する」ことのコストが他の人より高い。レオナルド・ダ・ヴィンチが数十の未完成作品を残したのも、このタイプと無縁ではないかもしれない。
強みは、発想の広さと環境への鋭い感度。気をつけることは、「考えるモード」と「行動モード」を意識的に分けること。頭が動いている状態で手も動かそうとすると、どちらも中途半端になる。
スタンフォードの研究が発表されたのは2009年。それからスマホは普及し、通知の数は増え、ながら作業が当たり前になった。あの研究結果が「今」に当てはまる精度は、当時より上がっているはずだ。
Strayer & Watson(2010)の試算では、真にマルチタスクを得意とする「スーパータスカー」は全人口の2.5%以下だった。自分がそこに入ると思っていた人間の大半は、入っていなかった。