SNSを"見てるだけ"の人が一番しんどくなる、という9年分のデータがある

SNSに投稿もコメントもしない。ただタイムラインを眺めている。それだけで孤独感が増していく——約7,000人を9年間追跡した研究が、その構造をはっきり示した。
7,000人×9年で見えた「見てるだけ」の代償
ベイラー大学の研究チームが2024年末に発表した論文がある。オランダの成人約7,000人を対象に、SNSの使い方と孤独感の関係を9年間にわたって追跡したものだ。
結果はシンプルだった。
「つながるために開いたSNSが、逆に孤立感を深める」という双方向の関係が確認されている。孤独だからSNSを開く。開くともっと孤独になる。9年分のデータが描くループは、かなり身も蓋もない。
そしてこの結果は、TikTokでも再現されている。上海体育大学のチームが2026年に発表した研究では、TikTokユーザーを4タイプに分類したところ、「問題傾向の高い受動的視聴者」が全体の38%を占めていた。能動的に使いつつ問題を抱えていないユーザーは、わずか13%しかいなかった。
「なぜ開いたか」がすべてを分ける
ただ、話はもう少し複雑になる。
ミシガン州立大学のSeidmanが2025年に発表した研究は、SNSの利用パターンだけでなく「なぜ開いたか」という動機に注目した。480人を対象に2回の調査を行った結果、同じ受動的スクロールでも、動機によってメンタルへの影響がまるで違っていた。
| 利用動機 | メンタルへの影響 |
|---|---|
| 「誰かとつながりたい」 | 能動・受動どちらでもウェルビーイング向上 |
| 「退屈だから」「FOMO(取り残される不安)」 | 受動的利用と結びつき、ウェルビーイング低下 |
深夜2時、眠れなくてなんとなくインスタを開く。特に目的はない。ストーリーズが流れてくる。友達が飲み会で楽しそうにしている。自分はベッドの中。——このときの「なんとなく開いた」が、FOMOを経由して孤独感に変わるルートが、データではっきり見えている。
「つながりたいから開く」と「暇だから開く」。行動は同じスクロールでも、その裏側で走っている心理回路がまるで違う。
深夜のSNSは、昼の何倍キツいのか
タイミングの問題もある。
ブリストル大学が2025年に発表した研究では、18歳以上の310人を2年間追跡し、18,000件以上のツイートを分析している。夜23時から朝5時の間にSNSに投稿していた人は、昼間に投稿していた人と比べて、抑うつ・不安・ウェルビーイングのすべての指標で有意に悪い数値を示していた。
スマホの中で人とつながっている気になっている間に、リアルで人と話す時間が物理的に減っていく。理研の研究が突きつけているのは、そういう構造的な話になる。
じゃあどうすればいいのか——と聞かれても
「SNSをやめろ」と言いたいわけじゃない。研究者たちもそんな単純な結論は出していない。
ここまで紹介した研究にはいくつかの限界がある。ベイラー大の研究はオランダの成人が対象で、日本の深夜スマホユーザーにそのまま当てはまるかはわからない。ブリストル大の研究はツイート(現X)のみの分析で、InstagramやTikTokは含まれていない。理研の研究は21日間という比較的短い期間の追跡だった。
ただ、複数の研究が指し示す方向は一致している。
受動的に眺める時間が長いほど、しんどくなる。夜に使うほど、悪影響が出やすい。「なんとなく」で開くと、FOMOのループに入りやすい。
Seidmanの研究が示唆しているのは、「目的を持って開く」だけで影響が変わるということだ。誰かに連絡するために開くのと、なんとなく開くのとでは、同じアプリでも脳が処理する情報の意味が違ってくる。
今この記事を深夜に読んでいるなら、たぶんさっきまでタイムラインを流し見していたはず。それ自体が悪いんじゃない。ただ、「なんで今スマホ持ってるんだっけ」と一瞬だけ考えてみる価値はある。——そんな程度の話。
深夜のSNS、自分は「見てるだけ」が多い?
参考・出典
- The Epidemic of Loneliness: A Nine-Year Longitudinal Study of the Impact of Passive and Active Social Media Use on Loneliness (James A. Roberts, Phil D. Young, Meredith E. David, 2024) — Personality and Social Psychology Bulletin
- Motivations for Active and Passive Social Media Use and Their Relation to Wellbeing (Gwendolyn Seidman, 2025) — Human Behavior and Emerging Technologies
- Exploring Digital Use, Happiness, and Loneliness in Japan with the Experience Sampling Method (Yijun Chen, Xiaochu Zhang, Rei Akaishi, 2024) — npj Mental Health Research (Nature Portfolio)