ゲーム1日3時間の小学生と、ゼロの小学生。脳テストで勝ったのはどっち?

「ゲームばっかしてないで勉強しろ」って怒られてた側の人、ちょっと面白い話がある。米バーモント大の研究チームが小学生2,200人以上を調べた結果、1日3時間以上ゲームしている子の方が、まったくやらない子より認知テストの成績が高かった。
その研究、どこの誰が出した話?
2022年10月、医学誌『JAMA Network Open』に載った論文(Chaaraniら)。米国の大規模脳発達研究「ABCD Study」のデータから、9〜10歳の子ども2,217人を抜き出した。週ゼロ時間の組と、週21時間以上(=1日3時間以上)の組を真っ向から比較したやつ。
使ったテストは2種類。1つは「Stop Signal Task」、衝動を止める力を測る課題。もう1つは数字を一時的に保持する「N-back」というワーキングメモリ系の課題だ。どちらでも、ゲーム組の方が点数が高かった。しかもfMRIで脳の動きまで撮影してある。
対象 / 9〜10歳の小学生 2,217人
比較 / 週0時間ゲーム vs 週21時間以上ゲーム
結果 / 後者の方が衝動制御・作業記憶テストで有意に高得点
脳の中で何が起きていたか
fMRIを見ると、ゲーム組は注意やワーキングメモリに関わる脳領域(前頭葉や楔前部など)の活動が強かった。逆に、視覚処理に関わる領域の活動はむしろ弱め。研究チームの解釈はこう ――「ゲーム組は、注意を要する処理を効率よく回している可能性がある」。
言い換えると、目に入った情報をただ全部受け取るんじゃなくて、必要な部分だけ取り出して使う処理が早くなっているかも、という話だ。スマホで通知の山に埋もれてる現代人にはちょっと羨ましい能力かもしれない。
日本のデータでも、似た方向の結果が出ていた
2024年に『Nature Human Behaviour』誌に掲載された江上らの論文も合わせて見たい。コロナ禍にPS5やSwitchが品薄だった頃、販売店が抽選で配ってたのを覚えてる人もいるはず。あれを「自然実験」として利用した研究だ。
抽選で当たった人(ゲーム機を手に入れた人)と、外れた人を比較。約97,000人を解析した結果、当たった側の方が3週間後・8週間後の心理的苦痛スコアが低かった。「ゲームをすると気分が良くなる」という関係を、相関ではなく因果に近い形で示した珍しいデータだ。
ゲームをある程度プレイしている群の方が、認知能力 / 心理的健康のスコアが高い ―― これが米国(子ども)と日本(10〜69歳)の両方で観測されている。
ただ、「ゲームし放題でOK」と読むのは早い
バーモント大の論文は研究チーム自身が限界を認めている。これは横断研究(ある時点での比較)で、「ゲームをしたから頭が良くなった」と因果を断定するものじゃない。もともと認知能力が高い子がゲームを好むだけ、という解釈も成立する。
あとプレイしたゲームの中身は測定されていない。マインクラフトで建築してる勢と、ソシャゲのオート周回を眺めてる勢を一緒くたにした話だと思っておきたい。
米国小児科学会(AAP)がレクリエーション目的の画面時間で推奨しているのは1日2時間以下で、3時間という条件は決して「健康に良い量」として推奨されているわけじゃない。睡眠、運動、現実の対人関係 ―― そっちが削られていたら認知テストで勝っても意味がない、というのが研究者たちの共通認識でもある。
「ゲーム=脳に悪い」という長年の通説、ここ数年でだいぶ揺らいでいる。少なくとも頭ごなしに「絶対やるな」と言うのは、もうデータと合わない。
あなたはこの研究結果、信じる?
参考・出典
- Association of Video Gaming With Cognitive Performance Among Children Undertaking the Adolescent Brain Cognitive Development Study (Bader Chaarani, Joseph Ortigara, DeKang Yuan, et al., 2022) — JAMA Network Open
- Causal effect of video gaming on mental well-being in Japan 2020-2022 (Hiroyuki Egami, Tsutomu Watanabe, et al., 2024) — Nature Human Behaviour
2022年に米国NIH(国立衛生研究所)が9〜10歳の子ども2,217人を対象に行った大規模研究(JAMA Network Open掲載)では、1日3時間以上ゲームをする子どもは、全くしない子どもに比べて、ワーキングメモリ課題と反応抑制課題のスコアが有意に高いという結果が報告されました。一方で、東北大学の川島隆太教授らの研究では、1日3時間超のゲームで言語性知能の発達が抑制される可能性も示されており、「時間」と「内容」の両方を見極めることが重要です。
①平日は60分・休日でも90分を上限にする(米国小児科学会AAPの推奨に準拠)。②就寝の1時間前までに終える(ブルーライトによるメラトニン分泌抑制を避けるため)。③パズル・戦略系(マインクラフト、テトリスなど)を選び、暴力的シューティング系の連続プレイは避ける。これら3つを守るだけで、睡眠の質と翌日の学習効率に明確な差が出ることが、2023年の英オックスフォード大学の追跡調査でも確認されています。
| 比較項目 | ゲーム1日3時間グループ | ゲーム1日1時間以内グループ | ゲームをしないグループ |
|---|---|---|---|
| ワーキングメモリ課題スコア | +0.07標準偏差(高い) | +0.04標準偏差 | 基準値(0) |
| 反応抑制(Stop-Signal課題) | 反応時間が約8%速い | 反応時間が約3%速い | 基準値 |
| 平均睡眠時間(平日) | 7時間42分(基準より24分短い) | 8時間18分 | 8時間36分 |
| 言語性知能の発達(2年後) | 伸びが鈍化する傾向 | 標準的に発達 | 標準的に発達 |
| 主観的幸福度スコア(10点満点) | 6.2点 | 7.8点 | 7.1点 |